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 月刊アトラス。世に多々あるオカルト雑誌の中、比較的有名どころとして上げられる雑誌。
 内容は、面白いものをより面白くの方針が貫かれている。だが、マニアは、その背後に一筋の真実を見る事が出来るという。
 実際、取材の正確さには定評があり、ありとあらゆる事をきっちり調べているのがよくわかる。また、記事を載せる時も、あくまでも取材に基き、地名の間違いや事件内容の矛盾などのありがちなミスは犯さない。
 そんな雑誌作りは、月刊アトラス編集部の編集長、碇・麗香(いかり・れいか)の指示によるものだった。
 都内、ある出版社の社ビルの一角、月刊アトラス編集部‥‥今日も、碇編集長の声が飛ぶ。
「‥‥没!」
「うひゃあああああああああああっ!?」
 言葉と同時に、シュレッダーに消えていく原稿。自信作が細切れになって消えていく様を見せられ、編集部一のダメ社員、三下・忠雄(みのした・ただお)は泣き声混じりの悲鳴を上げた。
 そんな三下に、碇編集長は追い打ちをかけるかのように言いつのる。
「こんな当たり前の記事なんて、読者は誰一人、望んじゃいないわ! もっと、オカルトチックに! センセーショナルに! ファンタスティック&バイオレンスに書くの! わかった!?」
「は、はひぃ‥‥かきなおしましゅぅ」
 碇編集長の迫力に、涙目で頷く三下。そして、三下は肩を落としながら、自分の席へと戻ろうとした‥‥と、
「あ、さんしたくん」
 碇編集長が、三下の事をあだ名で呼んで呼び止める。嫌な予感満タンで振り返った三下が見たのは、優しく微笑む碇編集長だった。
 もっとも‥‥その微笑みには、氷の冷たさが宿っていたのではあるが。
「原稿はもう良いから、取材に行ってきて」
 取材‥‥その一言に、三下は震え上がり、身をすくませた。
 しかし、一生そのままというわけにも行かないので、一応、おそるおそる聞いてみる。
「あ、あの‥‥こ、怖くないですか?」
「怖いかもね。多分。すっごく」
 素っ気なく言う碇編集長。三下は思わず身を投げだし、碇編集長のお御足に泣きすがった。
「嫌ですぅ! そんな怖い所にいったら、僕は死んじゃいますよぉ!」
「嫌でも、さっさと行く! 死んだら、その事もキッチリと記事にしてあげるから安心して死んできなさい!」
 自分の足に泣いてすがる三下を踏みつけながら碇編集長は答え、それから編集部内を見渡して声をかけた。
「誰か、一緒に行ってあげて。さんしたくんだけじゃ心配だから」
 編集部内には、編集者以外にも、バイトやらフリーのライター、イラストレーターやカメラマン。果ては、意味もなく何故か入り浸っている奴やらが溢れている。
 そんな者達の中から、取材への同行に名乗りが上がった‥‥

[看板イラスト:つかさ要]
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