●「学園祭」 オープニング
学園校舎が6階建てなのを知らない者はいないだろう。そして、地下には良くない噂ばかりある『資料室』と『機械室』があることも周知の事だ。幽霊が住み着いているとか、異世界への門があるとか、尾ひれのついた噂がある。流布されている噂はどれも信じがたい話だが、行方不明になった者や入院するほどの怪我を負った者も実際にいる。だから、好んで地下に行こうという者は滅多にいなかった。
しかし学園祭である。あれこれ準備をしていれば資料が必要になってくることもある。
時間に余裕があれば別の手段もあっただろうが、学園祭当日の朝ともなればそうも言っていられない。噂もなにも振り切って地下へ降りその『資料室』へと入っていった。
スイッチを入れるとぼんやりとしたオレンジ色の照明が部屋を照らした。書庫の棚はどれにもうずたかく埃がたまり、長い間誰も使っていなかった事がすぐに見て取れる。
「だ、誰か‥‥」
誰も居ない筈の部屋の奥から低い声がした。駆け寄ってみるとそれは3−Cの霧生玲(きりゅう・あきら)だった。玲は頭に怪我をしているのか、こめかみに血がこびりついている。命に関わるような傷ではないようだが、すぐに手当をしたほうがいいだろう。
その時だった。いきなり扉が勢いよく閉まり施錠の音が響く。
「駄目だよ。ここからは出さない」
全く別の声がどこからかした。姿はない。けれどその声は聞いた事がある声だった。
「つ、月神‥‥もうやめよう。もうこれ以上関係ない人達を巻き込んじゃ駄目だ」
玲が姿の見えない声に向かって言う。
「関係ない奴なんて誰もいないんだ、霧生。お願いだよ、ボクはもう少しだけ時間が欲しいだけなんだ」
それはどこか悲しそうな寂しそうな声だった。そしてふっと気配までもが消える。
「困ったな。あいつ、学園祭が終わるまで僕達をここに閉じこめておくつもり気だよ。まぁそれ以上の事をする気はないみたいだけど‥‥」
玲は苦く笑った。しかし、学園祭が終わってしまったら探しに来た資料も必要なくなるし、全く学園祭に参加出来ない事になってしまう。
時刻は午前5時。学園祭開始までは後4時間だった。
●ライターより
・悪名高い『資料室』に霧生玲ともども閉じこめられました。
・現時刻は午前5時で、後4時間後に学園祭が始まります。
・扉は施錠されています。窓はありません。広さは30畳ほどです。
・掃除用の道具入れに古いモップとバケツ、雑巾があり、水道があります。
・インターフォンは切断されているようです。
・脱出、探査、会話など行動の自由は保証されています。
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