【タイトル】 ボク達を海に連れて行って。
【執筆ライター】 葵桜
【参加予定人数】 1人〜5人
オープニング /ライターより /共通ノベル /個別ノベル


●「海キャンプ」 オープニング

猛暑が毎日続き、扇風機を回していてもムシムシとして思わず叫びたく
なる様な日が毎日のように続いている。
「ボクの友達に、空君と陸君という双子の友達がいるんだ・・・・」
突然口を開き、話をしだした狐族の銀(きつねぞくのぎん)は話を続ける。

「お父さんが事故で亡くなってからお母さんが一人で育ててきたんだ。
毎日忙しく働いていて、中々旅行に連れて行ってあげられないらしいんだ」


銀の言葉を要約すると、2人も一緒に海キャンプに連れて行ってあげて欲しいという。
赤ん坊の頃に海を訪れた事はあるのだが、物心がついてからは海にすら
行っておらず、二人はテレビで見る海の景色しかしらない。


「もし良かったら2人のお父さん、お母さん代わりとして2人を海に連れて行ってあげてくれないかな??」

最後に銀は言葉を付け加えた。
「実は、海キャンプの日は2人の誕生日なんだよ!」




●ライターより

こんにちは、葵桜です。
双子は以前に違う依頼で、依頼者の母親が双子の面倒を1日見てもらえるように
頼まれた子なのですが、関連性はまったくないので気にしなくてかまいません
(設定のみです)。
ちなみに2人は正真正銘の人間です。ここでは高校生ですが、精神年齢は
5歳児なのでお気をつけ下さい。
最後には2人の日記も覗けちゃいます。

【備考(人物と海)】
「高坂 陸《たかざと・りく》について」
双子の兄。しっかり者で聞き分けがよいが、あまり人に関して興味がなく
心を開きにくいタイプ。読書が好き。髪の毛は地毛で栗色。
食べ物の好き嫌いなし。
現実世界では5歳。
※ほっておいたら、木の下で読書を一人でするタイプ。

「高坂 空《たかざと・そら》について」
双子の弟。運動が大好きで走り回ったりするのが好きな活発的なタイプ。
その為、見ていないと忽然といなくなることが・・・・。
髪の毛の色は金髪。お目目パチリです。ピーマンが苦手。
現実世界では5歳。
※元気に遊びまわるあまり、怪我をしやすい方。

「両親」
父親は事故で亡くなった。母親(美空《みそら》)が女で一つで育てている、
シングルマザー。
その為、あまりお出かけや一緒に居てあげられる時間が中々取れない。


「海について(参考にしてください)」
@ここには洞窟に伝説があります。
海の近くの洞窟の奥に祠があるらしいのですが、祠には小さな猫鈴があるらしいです。
その鈴に触れると、ささやかな願い事が叶うそうです。
ただ、猫鈴を見たものは老人達の中でも、極少数の青春時代の話らしいです。
鈴猫を見たものが最奥まで行くと洞窟では咲かないはずの神秘的な樹があるとか。
もちろん、「神秘的」の意味を知るものは少なく、実際に見たものだけが意味を知る。

A海は透けていて、お魚も泳いでいます。クルーザーを出してもらえるので、
潜って魚やイルカ(人間に懐きます)、海の自然を楽しむのもいいと思います。
餌やりもできるとか。

「食事」
食事は出ないので皆で自炊になります。頑張って作りましょう。



●【共通ノベル】

●オープニング
猛暑が毎日続き、扇風機を回していてもムシムシとして思わず叫びたく
なる様な日が毎日のように続いている。
「ボクの友達に、空君と陸君という双子の友達がいるんだ・・・・」
突然口を開き、話をしだした狐族の銀(きつねぞくのぎん)は話を続ける。

「お父さんが事故で亡くなってからお母さんが一人で育ててきたんだ。
毎日忙しく働いていて、中々旅行に連れて行ってあげられないらしいんだ」


銀の言葉を要約すると、2人も一緒に海キャンプに連れて行ってあげて欲しいという。
赤ん坊の頃に海を訪れた事はあるのだが、物心がついてからは海にすら
行っておらず、二人はテレビで見る海の景色しかしらない。


「もし良かったら2人のお父さん、お母さん代わりとして2人を海に連れて行ってあげてくれないかな??」

最後に銀は言葉を付け加えた。
「実は、海キャンプの日は2人の誕生日なんだよ!」



●双子の兄弟〜陸と空〜。
 広い海に透明度が高い海水、おまけに天気も快晴で遊ぶにはもってこいの絶好日和である。
 加えて遊ぶには申し分のない環境である。
「あ・・空くん、一人でどこでも行っちゃダメよ・・・」
 広い海を楽しそうに駆け回り、どんどん遠くへ行ってしまう空を初瀬・日和(はつせ・ひより)が追いかける。
「みてみて、日和お姉ちゃん!! 綺麗な海〜」
「ええ、そうね・・綺麗」
 聞き分けは良いらしく素直に日和の元へ戻ってきたのはいいが、追いかけていた日和は息を切らしている。
「ひ・・日和、大丈夫か?」
 一生懸命追いかける姿を見ていた悠宇は心配して声をかける。
「大丈夫よ。銀君のお友達なら、私にとってもお友達よ!」
 子供は元気よく遊ぶものだとは思ってはいたが、初っ端からテンションの高い空を見て悠宇は不安を覚え始めていた。
 だがその一方で日和の笑顔で答えるさまに、ほっと胸を撫で下ろす部分もあった。
「(何より、日和が小さい子の面倒をみようっていうのが一番気がかりだ・・それも二人だぞ!)」
「悠宇、何考え込んでいるの? 行きましょう??」



「沙羅は海でイルカさんが見たいな・・空君はどう?」
「イルカがいるの?! すごーーい。ボクも一緒に行きたいな!!」
 頬っぺたに両手をあてて顔を少し赤らめながら喜ぶ空の仕草を見て、沙羅は上機嫌になりながら話を続ける。
「じゃー、空くんも行こうね。それから陸くんも誘って皆で一緒に行こうね・・」
 疲れている日和の変わりに空が何処かに行かないように空の手をしっかりと握る。


「・・・俺はいいよ。イルカを見るよりも本を読む方がいい・・」
 人見知りをしないように優しく尋ねた沙羅の言葉を陸は顔色一つ変えずに軽く交わすと、目線を手にしていた本へと落とす。
 決して悪気があるわけではないと分かってはいるのだが、沙羅は苦笑するしかない。
 情報の通り、人に興味がなく心を開きにくい陸に接するのは難しいようだ。

「陸君・・だよね?高校生の姿に驚いちゃったわ・・私の事覚えているかな?」
「二人とも海キャンプに来てたんだね!」
 イルカにまったく興味を示さない陸に声をかけたのは、以前空と陸の面倒を見たことがり面識のある秋月・霞波(あきづき・かなみ)と海原・みあお(うなばら・みあお)であった。
「うん、覚えているよ。お久しぶり・・」
「私達と一緒にクルーザーに乗らない? 前に一緒に遊びに行こうって約束したよね??」
 優しく微笑しながら告げる霞波の顔をじっと見つめてなにやら考えているようだが、何を考えているのか理解できず霞波は軽く首を傾げる。
「大丈夫!船の中でなら読書も出来るよ!!」
 木の下から動こうとしない陸を、有無を言わさず半ば強引にクルーザーへとみあおは引っ張りむ。
先にクルーザーに乗っていた九重・結珠(ここのえ・ゆず)は遠くからやって来る空と陸の姿を発見すると鼓動が高まり緊張する。
「二人のお母さん役ちゃんと出来るかしら・・。少々不安はあるけど沙羅ちゃんや霞波さんがいるから大丈夫よね・・」
 両手をぐっと握り締めて結珠は自信をもって二人に接する事を心に誓う。


「空君も陸君も足元に気をつけて・・」
 海に落ちないように結珠は二人に手を貸し、安全にクルーザーへと腰を降ろさせる。
 結珠は動きやすいTシャツにジーンズ、それにスニーカーを履いて2人の面倒を見るには最適の格好をしていた。
 体が弱いのでしっかりと帽子を被り、日光対策は万全である。
「皆乗ったな?それじゃー、行こうぜ?!」
 クルーザーの一番前に立ち悠宇は元気よく告げる。
 持ち主にクルーザーを走らせてもらい、イルカの出没しやすいポイントへと移動する。
 少しすると島から少し離れた位置にクルーザーは止まり、エンジン音が消えると心地よい波の音だけが一同の耳を支配する。


「うわぁ、しょっぱい・・」
「空君、海の水は塩水だから逆に喉が渇いてしまうの・・」
 頑張ってお母さん代わりを果たそうとする結珠は理解させる為に優しく空に説明を施す。
「くすくす・・小さい子はいろんなことを体験しなくちゃね・・」
 しょっぱい事を学習する空に満足しながら今にも泣き出しそうな顔をする空の頭を優しく撫でる。
 初めての海では学ぶ事は多いようだ。




●イルカと一緒に。
「陸君、クルーザーの中で本を読むと酔っちゃうよ?」
「うん、・・でももう少しだけ・・・・」
 霞波の心配を他所に陸は本を読むのを止めようとはせず、揺られる波の中で本に没頭する。

〜空サイド〜
「あっ!イルカだ〜!!!」
 遠くにイルカを発見したみあおはテンションを上げながら南の方角を指差し、感動する。
 野生にも関わらず人馴れをしているようでイルカはクルーザーの方へと近づいてくる。
「わぁ〜、可愛い・・」
 愛らしく鳴きながら手を差し出した沙羅の手に頬を摺り寄せて嬉しそうな仕草を見せる。
 「野生のイルカさんだけど、人懐っこいんだね・・」
 幸せなひと時を味わいながらも沙羅は銀も海キャンプに来る事ができていれば、きっと喜んでくれるのではないかと思い少し残念な気持ちになった。
「空・・怖がらないで触ってみろって・・」
 イルカの可愛らしい姿に初めは感動していたのだが空は近くで見るイルカに脅える。テレビを通して何度かイルカを見たことはあるが、初めての生で見るイルカに興味を惹かれながらも空は触れるのを躊躇う。
 頭を軽く掻いた後、悠宇はイルカにそっと触れて悠宇にしがみつく空に安全な事を教えこむ。
「か・・噛まないよね??」
「おぅ。イルカは人を無闇に噛んだりしないから安心しろ・・」
 悠宇の答えにほっとしながら空は恐る恐るイルカに触れる事が出来ると、悠宇を見て嬉しそうに微笑んだ。


〜陸サイド〜
「見て、海がとっても綺麗・・・」
 本を読むのを止めない陸に結珠は一面に広がる美しい海を指差し、陸に興味をもってもらえるように努める。
「・・そうだね」

「陸くん、ご本はいつでも読めるから一緒に海に行って遊ばない?」
 本を閉じ、結珠の言葉に耳を傾けた陸にここぞとばかりに日和が提案を持ちかける。
 日和に軽く頷いて、ゆっくりと陸は立ち上がろうとしたのだが目眩を起こしバランスを崩しかけたところを咄嗟の判断で気がついた霞波が後ろから支えた。
「船酔いしちゃったのね・・」
「大丈夫、ただの立ちくらみ」
 ずっと心配して見ていた霞波のお陰で陸は怪我をしないで済んだものの、顔色が少々優れないようで霞波のいう通り船酔いを起こしてしまったらしい。
「陸君・・大丈夫?座っていればきっと良くなりますよ」
 傍にある椅子に座らせたり、怪我をしていないか調べたり、とテキパキと対応する結珠をみつめる陸の姿に気がつき結珠は陸を見上げる。
「どうしたんですか?」
「べ・・別に・・。・・・なんかお母さんみたいで・・結珠さんありがとう」
 表情を殆ど変えなかった陸が少し照れ気味に語尾を濁らせて小声になりながら言った言葉を結珠は聞き逃さなかった。
 当たり前の言葉が結珠にとっては嬉しく思え、また一瞬でもお母さんのように思ってくれたことがとても嬉しかった。


「悠宇お兄ちゃんごめんなさい。お洋服濡れちゃったね・・・」
「んっ?このくらい暑さで乾くから心配しなくていいぞ」
 夢中になりすぎてイルカに触れていると悠宇の服に水が掛かってしまい、空は慌てて謝罪する。
 悠宇にとって体操服は見た目が嫌いなのでTシャツにジーンズ姿で来ていた。
 濡れたといっても夏の暑さならば、すぐに乾きそうな程度なので悠宇は着替える事はせず空の頭を万遍の笑みで撫でた。

「せっかくだからイルカに餌をあげないかしら?」


 陸と共にやって来た結珠が餌を手にしながら提案する。
「この海のイルカさん達は人懐っこいから、きっと餌を食べてくれると思うよ・・」
 すでにイルカと仲良しになってしまった沙羅はイルカを撫でて証明する。
 餌を食べてくれる事を期待して、手本に結珠から受け取った餌を差し出してみると一口で餌を飲み込んでしまった。
「本当だ・・皆で一緒に餌をあげよう?あげすぎないように気をつけながら・・ねっ」
 野生のイルカが餌を食べた事に感動し、みあおはわくわくしながら自分も受け取った餌を別のイルカに差し出す。
「わぁ・・・食べてくれた・・」
 感動的な出来事に日和は自然と声を漏らしイルカの触れた手を胸に当てて感触を確かめ、現実だということを実感する。
「空君も餌をあげてみる?」
「うん!でも・・少しどきどきするね・・」
 若干大人っぽい外見の空が子供らしい仕草を見せながら餌をイルカの前へと差し出す。
 霞波は空が身を乗り出して落ちなたりしないようにさりげなく支えながら共に餌をイルカに与える。


「空さん、せっかくここまで来たんだから海に潜ろうよ!!」
「楽しそうかも・・イルカさんと一緒に遊べるかな?」
 水着を着用しているみあおは空を誘って海の中へと入る。
 初めて入る海にも関わらず海の水への抵抗はないようで、みあおの後を追いかけるように透明に透きとおった海へと潜る。
 海へと潜った2人を見ながらTシャツの下に水着を着ている沙羅は羨ましく思い自分も海の中へとゆっくりと入る。

きゅぃぃ。
「きゃっ、くすぐったいよ・・」
 水に浸かった瞬間、不意にイルカが沙羅の顔に頬を寄せて遊ぼうというジェスチャーを示してくる。
「皆さん楽しそうね・・私達はクルーザーの上から楽しみましょうね・・」
 水着を着用していない日和は少し残念に思いつつも、クルーザーの上からでも楽しめると思いイルカのいる前に腰を下ろす。
「近くで見ると本当に透明度が高いんだね・・」
「海の色は、波長の長い赤い色から吸収されるんだ。深いところまで到達した青い光が、水の分子によって散乱され水面まで戻ってきて海水の透明度が高いほど海が青く見えるよ・・」

 淡々と当たり前のように話す陸の言葉に霞波はしっかりと耳を傾け、優しく微笑みながら話を楽しそうに聴く。
「そうなんだ・・陸君は物知りだね。私も海のお話しようと思ったんだけど・・」
「そんな事ないよ。霞波さんは海に何度か行った事があるんでしょ?」
 霞波の思ったとおり海に興味を示していた事が分かり、自分が分かる限りの知識で海のお話をし始める。


ざぶんっ。。
「ぷはっ!」
 潜っていたみあおが空と共に帰ってくる。
 手にはなにかを握っているようだ。
「みあおさん、手に何を握っているんですか?」

「貝殻だよ。海中の貝殻だから海岸よりも欠けていなくて綺麗でしょ?」
 日和に質問され手を開くと、数枚の見入ってしまいそうになる程の綺麗な貝殻が姿を見せる。
 深く潜りみあおが取ってきたものは貝殻で、みあおの周りにやって来た人達に貝殻を一枚ずつプレゼントする。
「みあおお姉ちゃん、もう少し潜ろう?」
「ううん、いいよ・・だけど余り深く潜り過ぎないように気をつけてね・・」
 空のリクエストを叶える為にみあおと空は再び潜り始めた。

1分も経たない内に2人は戻ってくると、みあおはクルーザーにいる陸の下へと近づき手にしていたものを見せる。

「陸さん、これ見て!」
「なっ・・・・・」
みあおに呼ばれ陸は視線をみあおの方へやると一瞬して凍りつく。
「陸君どうしたの?」
「・・・凍りついちゃったみたい」
 クルーザーの上へと戻ってきた沙羅が声をかけると、なにも言わない陸の代わりに苦笑しながらみあおが答える。
 首を傾げながら陸を窺い見ると本当に凍りついているようで、目線を再びみあおの方へ戻すと手になにかを握っている事に気がつく。
「きゃっ!!」
「これ・・なまこって言うんだよ」

 ついつい謎の物体に軽く声を出してしまった沙羅に空が笑顔を見せながら答える。
 その後、陸はなまこ嫌いになったらしい。
ちなみになまこは空が名残惜しそうにしたものの無事に海へと返したらしい・・・・。


「なぁ〜、あそこに見えるのって伝説の洞窟じゃないか??」
 悠宇の指差す方向を見ると、小さな洞窟があり不意に脳裏に伝説の洞窟の話が駆け巡る。
 クルーザーは少しずつ別の島の方へと流されていたようだが、遊びに夢中になっていたようで洞窟が視界に入るような場所にある事に気がついていなかったようだ。


クルーザーの持ち主に尋ねてみると噂に聞く伝説の洞窟だと語るが、噂でしかないと軽くかわされる。

「楽しそうですし・・・探検に行きましょう!!」
 噂だといえども行ってみたいと思ったのはもちろん日和だけではなかった。



●伝説の猫鈴を求めて。
 一行は早速クルーザーを陸につけてもらい、洞窟の入り口に立ってみると遠くで見るよりも以外と大きな洞窟で圧倒される。
「焼けた砂は熱くて歩けないからちゃんとサンダルを履かないと駄目よ・・」
 陸は海で泳がなかったのでサンダルを履いたままでいたのだが空は泳いだ後、サンダルを履かずにいたので降りる前に日和がサンダルを差し出す。


「なんだか・・・少し怖いね」
「沙羅ちゃん、私もついていますから大丈夫よ・・」
 暗くて肌寒い風が吹く洞窟内に入ることが少し怖くなった沙羅の不安そうな顔に気がついた結珠は自分自身も少し不安になりながらも元気づける。

「洞窟に入ってみようぜ?」
 先頭をきったのは悠宇で空が洞窟内を走り回らないように一緒に洞窟内へと入る。
 クルーザーの主から借りた懐中電灯をつけては見たものの暗くてあまりよく見えず初めは歩くのに困難だったものの少し経たない内に、途中から所々に蝋燭が立てられていた。
 地元の猟師達が荷物を置いて帰る際に蝋燭に火を灯して帰るのが昔からの礼儀だと考えられていて、奥には蝋燭が灯されていて明るいと地元の人々が語っていた。
「わぁ・・なんだか神秘的な感じね・・」
 蝋燭の火に灯され、自然と出来上がった洞窟内は神秘さを帯びている。
「あれがお話の中にあった伝説に語り継がれている祠じゃないかな?」
「足元に気をつけて歩かないといけないな・・」
 沙羅が祠を見つけたものの決して浮かれた気持ちにはならずに悠宇の忠告通りに足元には十分気をつけて近づいてみる。
「陸君、足場には気をつけてください・・」
「うん・・」
 後ろの方をゆっくりと歩いていた陸を心配して陸と共にゆっくり歩いていた結珠は、隣を歩きながら足場に注意する。
「きゃっ・・」
「っと、・・結珠さん大丈夫?」
 体育が得意な方ではなく運動神経が少しばかり鈍い結珠は、陸を心配する前に自分がバランスをくずしてしまい危機一髪の所を陸に助けられた。
「あ・・ありがとうございます」
「女の子には少し歩きづらいから・・。俺はいつも空に走りまわされてるから意外と危ない道を歩くのは平気だから」
 少し驚き、照れながら胸に手を当てて速まった心臓を押さえて陸にお礼を告げる。
 いつの間にか自然に結珠の前を歩き、安全な道を探しながら2人はゆっくりと皆の後をついて行った。


「うーん・・なにもないな・・」
 覗いた後に、祠の中に手を伸ばしてくまなく探すが中にはなにも見当たらず、楽しみにしていた悠宇は残念そうな顔を見せる。
「本当になにもないみたいだね。ただの伝説だったのかな・・」
 沙羅も少し残念そうにしながら蝋燭の火を近づけ祠の中をもう一度確認したが、なにも見当たらない。

「空!かってに何処かへ行くと危ないから、一人でどこでも行くなったら・・」
「わぁ・・・とっと」
 悠宇が気がついた時にはもう遅く、足を踏み外してよろけた空が顔面をぶつけそうになり、手で壁を強く押してなんとか間逃れた。
「あれ?今・・壁が動かなかった??」
 気がついたみあおが空が押した壁をもう一度力いっぱい押してみると向こう側にも道がある事が確認できた。
 途中からは悠宇が交代して隙間から人が入れるほどまで動かした後、安全を確認しながら奥地へと入ってみる。

中には大きな一つの部屋がある感じで、暗くてよくは見えないが奥は行き止まりのようだ。

「あっ!こっちにも同じ祠が・・。位置的には向こう側の祠と同じ位置だよね・・」
 懐中電灯に祠が照らし出され、祠の横に設置されている、長い事使われていない蝋燭立てに新しい蝋燭を立て、火をつける。
 みあおの予想通り、2つの祠は繋がっていて仕切り代わりに薄い板が間にはめ込まれていた。
「これって猫鈴だよね・・」
 不思議に思いながら沙羅は祠から鈴を取り出し、蝋燭の火を灯してみると「「ちりん」」
、という音が洞窟内に響き渡る。
「綺麗な音がする鈴ね・・」
 目を閉じて霞波は鈴の美しい音に耳を傾けると心が不思議と軽くなった気持ちになる。
「見てください!!今の鈴の音に反応して光が・・」
 日和は光の正体に初めは気がつかず、よく見てみると巨大樹に無数の蛍が光り輝いている。
 沙羅は手にしていた蝋燭の火を吹き消し、蛍の神秘的な光にみとれる。
 これが、老人達が語っていた「神秘的」の意味なのだろう。

「せっかく猫鈴を発見できましたし、お願い事をしましょう・・」
 最後に結珠の提案でそれぞれが猫鈴に願い事をする。

「(今日ここに一緒にこれなかったけど、大好きな親友の子といつまでも仲良しでいれますように・・・)」
「沙羅ちゃん?皆、行っちゃいますよ?」
「あっ、うん・・今行くよ」
 最後に沙羅が願い事を終えて優しく微笑みながら結珠に差し出された手をとり、足場の悪い岩を注意しなが飛び越える。
「結珠ちゃんもお願い事をしたの??」
「ええ、もちろん・・」
結珠のお願い事は、皆が楽しい夏の思い出をつくれますように・・という願い事であった。

こうして一行はそれぞれの願い事を心の中に託して洞窟内を後にした。



●夜ご飯を皆で食べよう 〜Happy Birthday to 〜
「空は焼きそばとカレー、どっちが好きだ??」
 したごしらえをしながら万遍の笑みで悠宇が尋ねると空はじぃっ、となにも言わず悠宇をみつめる。
「・・あ、そんな顔するなよ。これでも料理くらいできるんだからな!!」
「ううん・・ボクは焼きそばもカレーも大好きだよ・・」
 空の不安そうな顔を察して悠宇は言葉を付け足すと、少し安心した顔をして空は答える。
「でも・・あてにならないと思うんだったらあっちの料理が上手そうなお姉ちゃん達の所に交じってもいいけどな・・」
 少し残念そうな顔をして言葉を発する悠宇を見上げて空は微笑みながら言葉を返す。
「ううん、楽しみにしてるよ。とびきり美味しい料理を作ってね」
「おぅ!まかせとけっ!!」
 予想していなかった返答に悠宇は俄然やる気をだし、いつもよりも調子良い包丁捌きで具財を切っていく。
「空君、陸君お手伝いしてもらってもいいかな?」
 見ているだけでは2人を退屈にしてしまうのではないかと思い、霞波は包丁などを握る危ない作業は避け、野菜洗いやお皿運びを二人に頼む。
 外見が高校生に見えるといえどもやはり5歳児には変わりないと思い、霞波は考慮して頼みごとをする。

「悠宇さん、カレーの中に空くんにばれないようにピーマンを入れれば、きっと食べてくれると思うんだ・・」
「そうだな、いい案かも知れないな・・」
悠宇と相談して、カレーの種類は野菜カレーにする事に決定した。
「野菜カレーの作り方はお姉さんから教えてもらっているから、たぶん大丈夫・・」
 みあおはピーマンだと分からないように切った後、悠宇が作っているカレーの中にピーマンを加えて悠宇と共に野菜カレーを作り上げていく。
 ちょっと野菜カレーを作るのに不安があったものの悠宇も一緒に作っている事だし、みあおは少し安心しながらカレーを作った。


「海といえばバーベキュー・・・かな?」
 バーベキューならば嫌いな食材も避けられると思い、沙羅は結珠や日和と共に、串に野菜やお肉を刺していく。
「陸君もお手伝いしてくれないかしら?」
 お皿を運び終えて、本に手を伸ばそうとしている陸に気がつき日和が声をかける。
「うん・・いいよ」
「こうやって野菜を串に通すだけの簡単な作業だから、陸君にも簡単に出来るわ」
 日和は陸の前で実際に串に野菜を通して、説明すると陸は黙々と串に野菜や肉を刺し始める。
 だけど、沙羅や結珠や日和が陸に話しかけると出会ったときとは違い、しっかりと返答を返してくる。
 話をするという当たり前の事ではあるが、十分な成果である。


「さっ、これで全部よ。たくさん作りましたし、皆でたくさん食べましょうね!」
「陸君や空君は海辺で食べるのは初めてよね・・外で自分たちでご飯作るのもお家じゃなかなかできないでしょ? きっと楽しいわよ」
 最後に霞波が作ったハンバーグを盛り付けた皿を並べて準備が完了する。
 日和は陸や空が海に来るのは初めに近い事を思い出し、いつもと違う食事を楽しんでもらえることを願う。

「「いただきます!!!」」

 全員が礼儀よく食べる前に合掌してから、料理に手をつける。
 大人数での食事は楽しく、夕方の涼しい海風を受けながら料理を食べる。


「2人共、美味いか??」
「うん、とっても美味しいよ!ねっ、陸!!」
「うん・・美味しい」
 悠宇に質問されて野菜カレーや焼きそばを美味しそうに食べる空の姿をじっとみつめて陸は一呼吸遅れて返答する。
 どうやらピーマンが中に含まれている事に気がついたようだが空は気がついていないようなので陸は黙ったままでいた。
「みあおさん、空が食べてくれて大成功だな!」
 小声で悠宇が告げると、みあおはピースをしてお互いに満足げな顔を見せる。

「空君、それは私が作った、ハンバーグよ。味はどうかな・・?」
「ハンバーグもとっても美味しいよ! 霞波お姉ちゃんは料理上手なんだね!!」
 空があまりにも美味しそうな顔をして食べるので霞波は作った甲斐があると、逆に嬉しくなる。
 実はハンバーグにもピーマンが含まれていた。
 ピーマン嫌いな空の為に、分からないように細かく刻んでハンバーグの具財の中に一緒に入れる工夫をしていた。
 上手に出来ているのか不安だった霞波だが美味しそうに食べる空をみて、ほっとしながら胸を撫で下ろし嬉しく思いながらハンバーグに手をつける。

「皆、そろそろバーベキューもしない?」
 程よく野菜や肉が焼けたところで沙羅が皆に声をかける。
 いい匂いが風に乗って運ばれ、食欲が更に誘われ、周りに人が集まる。
「空君と陸君はなにを食べる?」
「えっと・・ボクはお肉〜!!陸はお野菜の方が好きなんだよ・・」
 空はどうやら野菜よりもお肉の方が好きならしく、対照的に陸は野菜派のようだ。
 霞波は空にお肉のついた串を、陸に玉ねぎやピーマンのついた串を火傷しないように少し冷ましてから手渡す。


「どこかのCMのコピーじゃないけど、『モノより思い出』っていうのは、あれは真実だわ」

 今日一日を含めて楽しいバーベキューに満足しながら夕焼け空を見上げて日和は告げる。
 バーベキューパーティーは笑い声が耐えることなく、長い事続いた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】
2489/橘・沙羅(たちばな・さら)/女/17/2年C組
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/16/女/2年B組
3525/羽角・悠宇(はすみ・ゆう)/男/16/2年A組
1415/海原・みあお(うなばら・みあお)/女/13/2年C組
2480/九重・結珠(ここのえ・ゆず)/女/17/2年A組
0696/秋月・霞波(あきづき・かなみ)/女/21/2年B組

申し込み順。



●【個別ノベル】

【2489/橘・沙羅】
【3524/初瀬・日和】
【3525/羽角・悠宇】
【1415/海原・みあお】
【2480/九重・結珠】
【0696/秋月・霞波】