【タイトル】 一千の中の一つの夢
【執筆ライター】 有月 加千利
【参加予定人数】 1人〜4人
オープニング /共通ノベル /個別ノベル


●「海キャンプ」 オープニング

 太陽がさんさんと降り注ぐ白い砂浜。その向こうの海には何が広がっているのだろう。
 例えば、青いさんご礁。
 例えば、魚たち。
「スキューバダイビング……やりたいな」
 ぼんやり海を見ながら月神詠子はぽつりと言った。
 海に潜って楽しめるのは夏しかない。
 そして月神詠子にとって最後になる学園生活。この海キャンプは心行くまで遊び倒してくいが残らないようにしたいのだ。
「そうだな。やればいいじゃないか。ここには面白いものがたくさん眠っているんだから」
 月神はさっきのぼうっとした表情からは考えられない、醜くゆがんだ微笑を浮かべた。
 それに自分で気がつき、自分で驚く。
 大きくため息をついて深呼吸した。
「本当に面白いものだから、一人でいくのもやだな。それにボクは誰かと何かをしてこのキャンプを楽しみたいんだ。一人で何かをする、なんてせっかく海にきたのにもったいないじゃないか」
 砂浜から大きな海を眺めて月神詠子は独り言を言った。
 そこからの月神詠子の行動は早かった。
 どこからかたて看板を見つけてくると、それにマジックでデカデカと大きく「スキューバダイビング体験実習」と書いたのだ。
 そこへ草間武彦が通りかかった。
「何してんだ。月神。スキューバって、お前できるのかよ」
 月神詠子はきょとんと草間を見る。
 そんな質問は愚問だ。
「潜ればいいだけでしょ」
「その『潜る』ってのに道具とか技術がいること、ちゃんと分かってるのか?」
「技術? そんなの必要ないじゃないか。そのまま深くまで潜っていって海の中を探検すすればいいんじゃないの?」
「お前な……。そのままって、普通の人間ならへたすると死ぬぞ……」
 そこまで言われて月神詠子は落胆と邪魔された怒りが込み上げてきた。
 自分はダイビングがやりたい。
 それはそのまま潜ってみんなと色々楽しみたいのだ。
 月神詠子は素で何時間も潜っていられる。
 そしてそれが普通だと思っている。
 そのことからしてこの計画は他者と一緒にやることが困難だ。
 でも。
 この海にはあるのもが眠っている。
 それを皆で見て、それについて語りたい。
「なんだよ! ボクは皆で楽しいことがしたいんだ! 夏の思い出を作りたいんだよ!」
 月神詠子は泣きそうな顔で草間に怒鳴った。
「ばか。怒るな。そんな泣きそうな顔で言ったってそのままじゃ誰もこないぞ」
「……じゃあ、どうすればいい」
「スキューバの道具一式そろえて来い。俺の分もな」
「……え?」
「俺が引率してやるよ。……実はな……俺もしたんだよ、ダイビング。でもお前って常識ないから一緒に行くのに心配だっただけ」
「じゃあ……一緒にダイビングしてくれるの?」
「ああ。どうせやるなら大勢募集しようぜ。プリントでも配ってさ」
 それから二人はスキューバダイビングの体験実習というプリントを生徒にくばり、海に立て看板をつけた。
 草間と月神はそのたて看板を見て満足げに海を見渡した。
「海の中に潜るって楽しいよな」
「うん。ねえ、知ってる? ここの海には面白いものがあるんだよ」
「なんだよ、それ」
「そうだな……例えて言うなら一千の宝石が眠っているんだよ」
「お宝か!」
「ある意味、宝かな」
 月神詠子は悪戯っぽい笑みを草間に向けた。
 草間は眉を寄せて怪訝そうな顔つきで月神詠子の顔を見たが、月神はその先を言おうとはしなかった。
「ボクがみんなを案内してあげる」



●【共通ノベル】

スキューバダイビング当日。
 月神詠子は船を用意してプリントで配った待合場所で待機していた。
 募集に応じてくれたのは三人。
 シュライン・エマという生徒と、
 海原みあおという生徒と
 綾和泉 匡乃という生徒。
 草間と自分を入れて5人という人数は、ダイビングをするのにはちょうどいいといっていい。
 もともとスキューバダイビングとは講習を必要とするのだが、インストラクターがついていれば多少の融通がきくものだ。
 月神はスキューバダイビングに関しては全くの初心者だが、そこら辺は草間に任せる。
「おーい、月神。道具、そろえたか〜」
 向こうから草間が手をふって月神に近づいてくる。
 それを見た月神は応えて
「ばっちりだよ!」
 と大きく手をふった。
 ダイビングとは、かなりの道具を使う。
 軽器機と呼ばれる軽い道具から、重器機と呼ばれるタンクやら、数を数えると軽く二十点は超える。
 草間に詳しい事を聞き、写真を見せてもらって、大体どういうものなのかという事を知り、メモに書いてもらった。            
 それをどうやって集めたのか、というのは、月神には簡単な事だった。
 なんせ、ここは夢の世界なのだから。

「こんにちは、チョコ、詠子ちゃん、今日はよろしくね」
 一番に来たのは、草間の友人、シュライン・エマだった。
 詠子はこの学園では人知れず有名人なので生徒は大体、顔と名前は知っていたりする。
「そのチョコっていうの、どっから来てるあだ名なんだ、シュライン」
 シガレットチョコを口にくわえながらそんな事を言う草間は、鈍いとしかいえない。
「分かんないのならいいいわ」
 くすりと笑みを浮かべてシュラインは草間に微笑んだ。
 草間はわけがわからないとしかめ面だ。
 そこへ、海原みあおと綾和泉匡乃がやってくる。
「ダイビングの待ち合わせって、ここでいいんだよね、詠子がいるから」
「ああ、そうみたいだね。ここの海はどんなものが見えるんだろう」
 やってきた二人に月神は相好を崩した。
 参加者全員集合だ。
「いらっしゃい! みあおさん、綾和泉さん! ここから船にのってちょっと深いところまで行くよ。でもそんなに深いところではないけど」
 それを聞いた綾和泉が言う。
「さんご礁あたりまで、くらいかな」
「そうだね。そのあたり」
 そのあたりに、「それ」があるから。
「じゃあ、船に乗って。そこにダイビングスーツとか、ありますから」

 船にのってダイビングの用意をする。
 シュラインはどれをどうしていいのか、分からなかった。
 てきぱきとスーツを着こなす綾和泉を見ると、自分の不器用さに腹がたってくる。
 みあおは草間に着せてもらっていた。
 月神もてきぱきと着込んでいる。
 見かねた綾和泉がシュラインに手をかす。
「ほら、スーツを着たらウェイトもつけないと」
「う、ウェイト? ってなんなの?」
「錘のことだよ。人間は浮くからね」
「詳しいのね……」
「僕、やった事があるんだ。かじったくらいだけど」
 みんなでなんとかスーツを着こなずと、月神は皆を見まわす。
 皆、準備万端だった。
 船が停止する。
「潜る前にもうひとつ。潜ったらしゃべれないからね」
『えーー!!?』
 シュラインとみあおは声をあげる。
 だが思い直したようにシュラインは手をあごにあてた。
「考えてみれば、そうよね……。水の中なんだから」
「だからこれを使うんだよ」
 そう言って草間は皆に白いボードとペンを渡し始めた。
 水の中でも書けるペン。
 それとボード。
「へえ、こんなのがあるんだ」
 みあおが言うのに月神が応えた。
「そうなんだ。僕もびっくりした。でもこういうのが無いと、本当に海の中では交信できないからね」
 各々にボードを配ると月神はvサインを示す。
「じゃあ、行くよ!」
 天気は青天、雲ひとつ無い、真夏の昼。
 さぞ、海の中も綺麗なことだろう。

 ドボン、と一人一人、海の中に入っていく。
 最初に海に入った草間が手助けをしている。
 全員が海に入ると、みあおは月神に、シュラインは草間にフォローを受けて海の中を泳ぎだした。
 綾和泉は経験があるという事でその後をついてきている。
 みんながはじめに思った事は、
『きれい……』
 だった。
 青天の天気の中の海。
 そこはとても綺麗だ。
 その一言では現せないくらいに。
 永遠に続くかと思われる珊瑚は、水面からの光を受けて薄い陰影を作っている。
 光を受けているところが宝石のように光っている。
 珊瑚の間をすり抜ける黄色や赤の熱帯魚。
 ゆらゆらと触手をゆらす、いそぎんちゃく。
 みあおはさっそくボードに、
『きれい!』
 と書いてみんなに見せた。
 それを見た皆はうんうんと相槌をうつ。
 草間は親指をたてて、グーと表現する。
 今日はダイビングびよりだ。
 今度は月神がボードに何か書く。
『お勧めスポットがあるからついてきて』
 月神はみあおの手をとってすーと先にいくと、それを追いかけてシュラインと草間、綾和泉がついていく。
 月神は海の岩壁に開いた、穴に入っていった。
 そこを皆でくぐると―――
 岩壁でできた洞窟、天にあいた穴から、めいいぱいの光が差し込んで、その世界を照らしている。
 暗い下方から見ると水面から入る光は、水に屈折して岩壁に神秘的な模様を作り、淡い光で洞窟の中が照らされている。
 そこに小さな黄色い熱帯魚が泳いでいる。
 その光は、まるで神が光臨するさまを見ているようだ。
 四人はその景色にしばし無言で上方の光を見上げて、感嘆にふける。
『どう?』 
 月神はボードに書き込む。
 それに綾和泉が急いでボードに書き込んだ。
『最高だ! 僕はこんなの見たことなかったよ!』
 それに月神は親指を立てて応える。
『喜んでもらってよかった』
 綾和泉は携帯していた水中カメラを構えた。
 それにびっくりしたのがシュラインだ。
『あんた、カメラまでもってるの?』
 マスクの中で目を見開いているシュラインに綾和泉は頷いて応える。
 綾和泉が何枚か写真をとっていると、月神はまたボードになにやら書きこんだ。
『もっと面白いものがあるんだ。ついてきて』
『こんどはなに?』
 みあおがそう書くのに、
『見てからのお楽しみ』
 とまたみあおの手をひいて月神はその光の岩壁を後にする。
 カメラを収めた綾和泉はそれにつづき、あたふたしたシュラインは草間に先導されて月神の後をついていった。

 突然、シュラインが草間の肩をものすごい勢いでたたいた。
 叩いた、といっても水の中なので痛くは無いのだが。
 必死の様子でシュラインが指さす方向には、なにやらでかいものが泳いでいる。
 みあおも青くなる。
 あれは、サメだ。
『サメ! 食べられちゃうよ!』
 そうボードに書いて月神に見せる。
 だが、月神も草間も綾和泉も平然としていた。
 綾和泉がボードになにやらさらさらと書いていく。
 その間にもそのサメは五人の上を通り越そうとしている。
 光がそのサメでさえぎられる。
 体が大きくてざっと十メートルはある……。
 体についている白い斑点模様が、いっそう不気味に見えた。
 口だって大きい。
 綾和泉が書いていたボードを皆に見せる。
『あれはね、「ジンベエザメ」って言って、おとなしいサメなんだよ。あったかい海が好きで、絶対人を襲わない』
 そのボードを見てもシュラインもみあおもなんだか納得できない。
 とにかくでかいのだ。
『怖い!』
 みあおがそう書くと、月神はみあおの手をひいてジンベエザメから距離をとった。
 それに他の三人もついてくる。
 三人に「大丈夫」とうんうん、頷かれて、シュラインもみあおも遠くからシンベエザメを見守った。
 よく見ると、ゆったりと泳ぐその様は、なんだかくじらに似ている。
 ジンベエザメは優雅に泳いで沖の方へと消えていった。
『結構かわいいかもね。ジンベエザメって』
 シュラインはそうボードに書いてみんなに見せた。
『うん、くじらみたい』
 みあおもそう書いてみんなに見せた。
 三人はそれに頷く。
 声に出せるなら、
「そうでしょう?」
 とでも言いたいところだ。
『ちょっとしたアトラクションが入っちゃったけど、本命の場所に行こう』
 月神がそうボードに書く。

 また暫く5人は泳いでいく。
 下に見えるさんご礁が目にもあざやかだ。
 ――――そこに。
 あってはならないものを四人は見た。
 ―――城がある。
 海の中に、まるで中世のヨーロッパの城が建っていたのだ。
 四人は言葉を失うと同時に何か不安を感じた。
 それを感じとった月神はボードに
『怖くないよ』
 と書いて、その城の中へと進む。
 その城は、海の中にあるとは思えないほど、綺麗だった。
 遺跡、では無いようだ。
 それに決定的なのが―――
「ぎゃー!!」
 思わずシュラインは悲鳴を上げた。
 ぶくぶくと空気の泡が出て、混乱している。
 危険だったため。つきそっていた草間が肩に手をまわしてシュラインをなだめた。
 ―――その城には人がいたのだ。
 それも、無彩色で。昔の白黒無声映画を見ているようだ。
 きらびやかなドレスをまとった沢山の人が、その城で何か舞踏会を開いている。

―――私は、不安だったわ

 突然、声が聞こえた。

綾和泉は急いでボードに殴りがきする。
『なんなんだい! ここは!』
それに月神は
『ここが今日のメインスポットなんだ。大丈夫、怖くないから』
 と書いてみんなに見せた。
 月神がその舞踏会の会場の天井近くを泳いでいくと、無彩色だった人々の中に、一人だけ色がはっきりした少女がいるのがわかった。
『あの子をみていてごらん。この声はあの子のものだから』
 四人は無言で月神の言葉に従った。

―――だって、伯爵家の令嬢が、私の教育係になるなんて、どう考えたって、おかしいもの。私は男爵家。階級が下の家の、娘の教育係になるなんておかしいじゃない―――

 また声がきこえた。
 色のついた少女は、まだ十歳くらいだ。
 その少女の見るものは、無彩色ながら、綺麗な顔をした二十代の女性だった。

 その女性に少女は声をかける。
「あなたは本当にそれでいいの? 私はべつにあなたがいやならそれでいいのよ」
「マリス様は私ではいやですか?」
「私がいやなんじゃないわ。あなたがいやでしょう!」
 マリスと呼ばれた少女は女性にそう憤った。
「だからこれはきっぱり断ってもいいのよ」

―――私は彼女にそう促した。だって、私の教育係になんてなったら、結婚だってままならない。伯爵家といえば、王族にだって嫁げる身分の女性だ。でも、彼女は私の侍女になるという。ようするに、没落貴族なのだ―――

―――だから私は彼女が不憫に思えて仕方がなかった。階級が下のものの侍女になるなんて、私だったらプライドが許さない。

 マリスと話をしている女性が穏やかに言った。
「……マリス様があまりにも率直だから、本当のことを言ってしまいましょう。実は、さっきまで、いやでした。死んでしまおうかとも思っていたところです」
「ほら、やっぱり。だから断ってくれていいのよ」
 心配気に女性の顔を覗きこむマリスを見つめて女性は言った。
「でも、今、考えが変わりました。マリス様は賢い。相手を思いやれる方ですね。だからマリス様にだったら、仕えてもいいなって、思い直したところです」
「……なにそれ? 買いかぶりすぎよ!」

―――彼女は、私の何が気にいったのか分からなかったけれど、あの短い会話で、私の国に来ることを決心したのだ。


 だから、私たちは船にのった。
 これから築く、未来のために――


 ゴボン、と音をたててすべてのものが水疱に帰していく。
 マリスも女性も、城も人も。
「月神!」
 なんだ、これは! と草間はマスクを無視して声に出した。水の中なので、くぐもっている。
 草間はおびえるシュラインの肩をきつくつかみ、月神もみあおの手を握っている。
 綾和泉は混乱していたが、水の中で混乱する事が危険だと分かっていたので、必死で自分をなだめた。

 城も人も、あっさりと水疱に変わってしまった。
 しばらくそこにたたずんでいた五人の中でみあおが何かに気が付いて、それを指でさす。
 それにならって皆がそこへ目をむけると。

 そこには沈没したと思われる船があった。

 海の水に侵食されたその船は外装もぼろぼろだった。

 綾和泉がボードに書き記す。
『今のは何だったんだい』
 月神が応える。
『もうそろそろ上がらないといけない時間だ。上がったら説明するよ』
 四人は納得しないまま、月神の後をついて、乗ってきた船に戻った。

 ダイビングの装備を外しながら四人は月神に説明を求める。
「さっきのあれ、なんだったの? 詠子ちゃん」
 先陣をきってシュラインが訪ねた。
 それに真剣な顔をして月神は応える。
「あれはね……。夢なんだ」
「夢……?」
 装備をはずしながら他の三人は口をそろえて鸚鵡返しに尋ねる。
「さっき見た、沈没船があったでしょう?
 あれには千人の人が乗っていた。だが、到着寸前で沈没したんだろうね。いつの時代のいつの船かも分からない。ここは誰にもしられていない島だから記録にも無い。でも、確かに僕たち意外の人間がいて、希望に満ちて船にのった千人の人間がいたんだ。でも沈没した。多分、生存者はいない。あの場所はね、あの船に乗っていた人物の前日が見られる場所なんだ」
 草間がわけがわからない、という風で聞き返した。
「沈没した船に乗っていたやつの前日……?」
「そう。今回はマリスっていう少女の夢だったね。あの色のついている人物の前日が見られるんだ。あの場所は毎日、違う人の大切な思い出が眠っている場所で、そして毎日、違う人の夢が見られる」
 シュラインが顔をしかめた。
「そんなの、悪趣味だわ」
 月神は脱いだスーツを脇によけて応えた。
「そうかな。僕は人生の大切さがしみじみと分かるけど。かなえられなかった夢。天災という事故によって、志半ばに亡くなった人たち。それはあまりにも無残だ。だけど、かれらは船に乗る前まで、前向きに真剣に生きていた。その生き様を見ると、僕もきちんと生きたいって思うんだよ」
 そう言った月神の顔は、なんだか寂しそうだった。
 
 ダイバーズスーツやら器機をすっかりはすした五人はそれから船の上で各々手足を伸ばし寛ぐ。
 ぽつりと綾和泉は言った。
「なんか考えちゃうな。さっきの少女の事」
「そうね」
 シュラインがそれに応える。
 幸せ、とは言えない人生だった。
 十歳という若さで海に飲まれて亡くなった。
「私もがんばって生きよう」
 みあおが真剣にそう言う。
 そうしんみりとした雰囲気のなか、草間が何か皆にぽんっと放ってよこした。
 それは牛乳だ。
「しんみりしてないで牛乳でも飲もうぜ」
 スポっという音をたてて草間は牛乳パックにストローを差し込む。
 そしてぐびぐびと飲みだした。
「僕ものもうっと」
 月神もそれを手にとってぐびぐびと飲みだす。
「牛乳ねえ」
「せめてノンアルコールビールがよかったな」
 綾和泉とシュラインはそれを見てちょっと苦笑した。
「ノンアルコールビールって美味しい?」
 みあおが言うのに、シュラインは応える。
「みあおちゃんでも飲める、っていう基準かな。苦いわよ」
「じゃあ、牛乳でいいや!」
 残りの三人も牛乳にストローを刺した
「ぷはー、やっぱり暑い日はこれだよな」
 草間がそう言うのを聞いて四人は「そうだよね」と笑いあった。
 夏の日に一瞬、垣間見た、幻。
 それは、本当に幻のような記憶で、すぐに泡となって消える。
 けれど、ふとした時に思い出して、大事な事を思い出させてくれる。
             ★END★


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
 1415 /海原 みあお   /女性 /鳥に変身可能
 1537 /綾和泉 匡乃   /男性 /予備校教師
 0086 /シュライン・エマ /女性 /草間興信所事務員



●【個別ノベル】

【1415/海原 みあお】
【1537/綾和泉 匡乃】
【0086/シュライン・エマ】