【タイトル】 遭難! 必死 de サバイバル!!
【執筆ライター】 とーい
【参加予定人数】 1人〜4人
オープニング /ライターより /共通ノベル /個別ノベル


●「海キャンプ」 オープニング

夏・海・キャンプ・・・・そんな言葉が並べば誰もが心ウキウキ。
そして、開放的になってしまうのが人間の悲しいサガ。
そんな開放的な夏の罠に引っかかってしまった人間がここに1人・・・。

「迷ったデ〜ス!!」

3年B組所属。その名をマドモアゼル・都井(とーい)と言う。
さて、そんな人ですが、何に迷ったかと申しますと。

「海にボート出して遭難したデ〜ス・・・」

・・・だそうです。
しかし、マドモアゼルは1人ではなかったのです。
ある者は強制的に・・またある者は自主的にマドモアゼルと共に遭難してしまった人々がいるのです。
そんな人々がたどり着きましたとある場所。
ここから元の場所に戻るためのサバイバルが始まるのです!!

そう。
そんな巻き込まれた人々とは、アナタ方のことなのです!!




●ライターより

方向音痴のマドモアゼルが運転(手漕ぎ)していたボートが遭難。
そしてどこか見知らぬ土地に流れ着いた参加者。
そんなサバイバルな状況を脱していただきたいと思います。

<現状>
たどり着いた場所は海岸で、見渡す限りの海が広がっています。
浜辺から少し歩くと既に大きな森(山?)があります。
乗ってきたボートは修理すれば使えるかもしれませんが、修理する道具はありません。

・キャンプでやりたいことはありますか?
・強制的に参加させられたのか、自主的に参加したのか。
・受動的(救助を待つ)か、能動的(探索したりする)か。
・なにか道具や食べ物などを持っているか。
・ところで、キャンプファイヤーはお好きですか?

以上、5点できればお答えください。

なお、シナリオは現在はコメディ傾向で考えておりますが、皆様のプレイング次第ではどう転ぶかわかりません・・・。
お気軽にご参加ください。



●【共通ノベル】

1.遭難する御一行様

「海デース! 海・海・海・海デース!!」

3年B組・マドモアゼル・都井(とーい)は空の下で叫んだ。
ほんのりと赤い夕日に染まる海が、今が夕方だと知らせている。
「それはおまえが、ボートなんぞを出すからだ!」
2年A組・草間武彦(くさまたけひこ)はマドモアゼルのこめかみを両手をグーにして挟み込むと、グリグリと捻りを加えた。
「まーまー、草間よ。こうなった原因は確かに都井サンだけどもよ? 悲観的になっちゃー人生終わりってモノよ?」
そんな草間をなだめるように3年B組・丈峯天嶽(たけみねてんがく)はポンポンと肩を叩くと笑った。
「足が着く地点で逃げれば良かったかも・・・」
がっくりと頭を垂れ、なぜに逃げなかったのかと自問自答するのは2年A組・シュライン・エマ。
「あ、でも、ほら、折角のキャンプですし、いい思い出に・・・なりませんか?」
苦笑いでエマを慰めているのは2年C組・海原みあお。
到底自分でもいい思い出になるとは思っていないようだ。
「もっと遊びたかった・・・もっと酒、飲みたかった・・・」
「お酒は20歳になってからです」
独り言を呟いた3年C組・来生十四郎(きすぎとしろう)に、同じく3年C組のシオン・レ・ハイはそう言った。
「・・・まぁ、ニコチンが切れる前に帰りたいから、できるだけのことをしようぜ」
「タバコも20歳になってからデ〜ス」
再び呟いた来生に、マドモアゼルは物凄くまともなことを言った。

『・・元はと言えば、都井。おまえが原因でこんなところで遭難してんだろうが!』

来生と草間のダブルパンチ攻撃がマドモアゼルを直撃!
マドモアゼルは、KOされたのであった・・・・。


2−1.回想する御一行様
そもそも、海キャンプの目的は海でキャンプすることである。
炊事・洗濯・火事・オヤジ・・・なんか違うけど、まぁ、そんな感じでキャンプするのである。
したがってそれ以外の時間、すなわち自由時間に何をするも個人の自由である。

「海に出る人、この指とーまレ♪」

などと、マドモアゼルが言おうが誰も気になどしていなかったのだ。
・・・本来なら、この時点で止めるべきだったのかもしれない・・・。

「海・・・海に出たらやはり魚でしょうか・・・」

マドモアゼルの言葉に、まず吊られたのがシオンであった。
濃紺の袖が印象的な体操服は、あちこち汚れている。
どうやら色々既に仕事をこなしてきたようだ。
そして、シオンは吸い込まれるようにマドモアゼルの指へと止まった。
「オゥ! 一番乗りですネ〜!」
「わぁ、私が一番乗りですか〜!」
何かよくわからないノリで、二人はそんな会話を交わした。

「あ、都井先輩!」
そんな2人の元へ現れたのは銀の髪の乙女・みあおであった。
細い2本の白い線がまぶしいスクール水着を着込み、都井に声をかけた。
「この間はとてもお世話に・・・」
だが、都井はそんなみあおの言葉を聴いていなかった。
「これで同志が3人に増えたデース!」
「3人いれば3匹は魚が取れますね〜!」
なぜかシオンまでもがウキウキと手に手をとって喜んでいる。
「いえ、あの、あたしは・・・」
「海に出るには、船が必要デース! そして、アタクシ船を見つけたのデース! 豪華客船『ニンジン丸』くんデ〜ス!」
みあおの話をとことん無視しつつ、バッと手を差し出したマドモアゼル。
その手の先にはボロっちい8人程乗れそうなオレンジの小船が・・・。
「ど、どの辺が豪華客船なんですか?」
自分が海には出ないことを主張していたことを忘れ、思わずそう訊いてしまったみあお。
その一言が運のツキである。
「ここデース! ここ金色ですネ? ホラ豪華デース!!」
「すごい! 金箔でしょうか!?」
「ただの金属では・・・?」
みあおは既に会話に引き入れられてしまっている。
これでみあおも間違いなく海に出るクルーの一員となってしまっていたのだった・・・。


2−2.さらに回想する御一行様
一生懸命にニンジン丸くんを押して海へと漕ぎ出そうとするマドモアゼルとシオン。
しかし、なかなか前に進まない。
「何してんだ?」
「・・いいところに来たデース! この船が動かなくて困っていたのデース!」
渡りに船とはまさにこのこと、とばかりにマドモアゼルは通りかかった草間と来生を捕まえた。
草間は学校指定の体操服をラフに着こなし、来生は私服であろう膝の擦り切れたジーパンに黒いシャツを着ている。
どちらも微妙に不良であるが、海キャンプに参加している辺りがまだまだ子どもっぽさを表している。
「動かねぇ? おめーらの力がねぇだけだろが。ちょっと退け」
来生はそういうとマドモアゼルとシオンを後ろに下がらせ、ニンジン丸くんを自ら押し出した。
ニンジン丸くんは2人掛かりで数センチしか動かなかったにもかかわらず、来生の手により見事に移動していく。
「チョコ、何してんの? ・・・都井先輩??」
草間を見つけ、近寄ってきたエマがマドモアゼルを見つけると怪訝な顔をした。
「おぅ。なんか船動かしたいらしいんで来生先輩が手伝ってんだよ」
「・・・そう」
水着の上から白いパーカーと白いショートパンツ、夏の海辺に爽やかさを演出するエマ。
だが、その表情は険しくマドモアゼルを見つめる。
「何かしそうなのよね・・・」
そんなことをしているうちに船は着水。
シオンとマドモアゼルは万歳三唱で喜んでいる。
「着水デース! 来生クンはすごいデース! 一緒に海へ出るデース!」
・・・ドサクサに紛れ、そんなことを言いマドモアゼルは来生をまず船へと押しやった。
「あの、あたしは別に・・・」
船の着水をなんとなく見守ってしまったみあおもマドモアゼルによって船へと乗せられた。
「俺らも乗ってみるか?」
と、草間に言われエマもしぶしぶ船へと乗り込んだ。
「海・・・あぁ、夏の香りがします・・・」
シオンは何を思うのか、自ら禁断の箱舟へと乗り込んだのであった・・・。

オールを握るのはもちろんマドモアゼルである。
「アタクシのテクニックをとくと見るのデース!!」
マドモアゼルの眼鏡の奥の目が光った気がした。
次第に加速していくニンジン丸くん。
と・・・

「ちょーっと待ったーーー!! 俺も乗せて!!」


2−3.そして回想した御一行様
「丈峯先輩!?」
「どこから湧いて出たんですか!?」

海の中から不意に現れた天嶽に驚く一同。
しかし、天嶽は何事もないように船に乗り込むと笑って言った。
「いや、面白そうなんで乗せてもらおうと思ってさ。泳いできた」
「意外と体力あるんですね。こんなに遠くまで」
みあおが心底感心したように天嶽に言った。
ふと、天嶽は自分が泳いできたであろう浜辺の方向を振り向いた。
「・・・マジ? うわ。なんか見たらスゲー疲れてきたかも・・・」
「自分がどれだけの距離を泳いできたか知らなかったわけね」
あきれたように呟いたエマに天嶽は言った。
「男にはやらねばならんときがあるってことよ。男のロマンってヤツ、わかる〜?」
「ただ無謀なだけだろうが・・・」
天嶽のよくわからない言い訳に来生がボソリと呟いた。
「男のロマン・・・あぁ、海ですねぇ・・」
遠い目でシオンは海を見つめる。
「なぁ、俺らホントにこの船乗ってて大丈夫なわけ?」
草間のその呟きは実に的を得ていると言えよう。
「あたしもすごく不安なんですけど・・・」
困ったようにみあおも言ったが、元凶は白い歯を見せながら笑った。

「ダイジョーブ! 全てアタクシに任せなサ〜イ!」

そういうが早いか、マドモアゼルはオールをガッ!! と持つと物凄い勢いで漕ぎ出した!
「な・・おまえ、船も押せないクセになんて速さで漕ぎやがる!」
来生がそう叫んだのも当然。
推定、20km/hは出ていたと思われる。
しかし、体感速度はそれ以上であまりの怖さにエマは草間に、みあおは・・船の縁へとしっかり?まった。
「これこそ海のロマー・・・オゥ!?!?」

  バキィ!!!!!?

派手な音が聞こえ、オールが大破した。
どうやら浅瀬に乗り上げたようで、石がぶつかったのか船の底から水がじんわりとしみてきた。
「降りるデース! 船が壊れたデース!!!」
わらわらと乗組員たちは浅瀬へと降り立ち、島へと上陸した。
「ここ・・どこよ?」
見渡す限りの海。
先ほどまで見えていたはずの元の陸地は見えない。
「・・・遭難・・・ですか?」

みあおはポツリと呟いた・・・。


3.相談する御一行様
「とにかく、逃避しててもどうもならないわよね」
立ち直ったエマは現状を把握するべく辺りを見回した。
「そうだな。とりあえずは、行動拠点となりそうな場所でも確保しておくべきだろう」
来生も冷静にエマの意見に同意した。
「葉っぱの屋根の掘っ立て小屋か!? いいじゃん!」
「・・・いや、俺はそんなことは一言も言ってねぇ」
天嶽の喜び勇んだ言葉に来生は冷たく言い放った。
「え〜!? 無人島サバイバルと言えば食料現地調達! 手製の釣竿に槍! 葉っぱの屋根の掘っ立て小屋だろ! ダメじゃん、基本は押さえようぜ?」
「基本ですか〜。なんだか昔を思い出します・・・」
シオンが横から口を挟んでおきながら、なにやら自分の過去を回想している。
「どんな過去だよ・・」
「とにかく、皆さん。何か使えそうな道具持ってますか? ・・あたしは残念ながらご覧の通り手ぶらなんですけど・・」
草間の呟きのあと、みあおがそう言った。

「あー・・ちょっと待てよ。煙草とライター、手帳とボールペンくれぇかな。使えそうモンは」
「俺は・・・酔い止めの薬とぉ、投網とぉ、その投網で魚取った時用のバケツとぉ、恋愛成就のお守りね☆」
「ドコに持ってたんすか・・・? 丈峯先輩。 あ、ちなみに俺はこのシガレットチョコのみっつーことで」
「食料は大事ですよね。わ、私は・・・このお菓子類を・・・ホントは・・・楽しみに取っておいたんですけど・・・」
「私は食料じゃないけど、一応飲み水を持ってる・・・けど、この人数じゃすぐになくなっちゃうわね」

「アタクシ、カメラ持って来ましター! 記念撮影するデース!!」
ドコからともなくマドモアゼルはカメラを取り出し、唖然とする人々を背にカメラを掲げて自分も写りこむように反対に持つとあっという間にシャッターを切った。

「な、なんだかデジャヴを感じてしまった・・・」
我に返ったみあおがポツリと呟いた。
「キサマはもっと危機感を持てんのか!」
来生が今にも掴みかからんとした顔をしたので、慌ててシオンが仲裁に入った。
「まぁまぁ。生きていれば何とかなりますから、落ち込まないように都井さんが気を使ったんだと思いますよ」
ニコニコとそう言ったシオンだが、その後ろで小躍りするマドモアゼル。
「すげー! そこまで計算ずくだとは!」
天嶽はそう納得したようだったが、他の者は納得するわけがない。
「ぜんっぜんそうは見えないわね」
「・・・都井先輩は放置方向でとにかく話を進めよう」
エマの横でいつもなら絶対にやらないようなまとめ役を草間が買って出た。

「とにかく、この場所の特定をする役と海を通りかかるかもしれない船や救助艇の監視役、それから自力で何とか船を直す役・・・その三つに分かれて行動するのがいいと思うんだが」

「じゃああたし、森を探索したいんですが・・」とみあおが言った。
「俺は・・・そうだな。ひとまず船を直すにしても材料がいるだろうから、森や浜辺を見回ってみるか」
来生は冷静な分析の後、そう言った。
「こうなったら色々探し回るのが吉! 【動かざる事山のゴト師】ってさ! ゴト師ってのはいけない事する人の事だから! やっぱ動かないと!」
天嶽が張り切ってそう言った。
「ご、ゴト師って・・・? なんか・・ひどく間違ってる気がします・・・」
みあおの呟きは天嶽には届かなかった。
「スんバラシイ! これでこそ海! ではアタクシは・・・」とマドモアゼルが口を開こうとするのを来生は塞いだ。
「キサマはいいからここで船が来るのを黙って待ってろ! いいか? 何も余分なことはしなくていいから、遭難を知らせる旗か何か立てておけばいいんだぞ!?」
どうやら仏の顔も3度までらしい。
「都井先輩がここにいてくれるのなら、私もちょっと見回ってこようかしら。夜になる前に何とかしたいものね」
「じゃあ俺も一緒に行くわ」とエマの言葉に草間はそう言った。
「あー・・・じゃあ私も少し回ってきましょうか。昔取った杵柄ですから」
「『むしりとったキヌヅカ??』 ハゲ??」
シオンの言葉に思わず反応した天嶽が怪訝な顔をした。

「解散解散! 俺は何にも聞いてねーからな!」

そして、来生が無理やり解散宣言をし天嶽の言葉は闇へと葬られたのであった・・・。


4.探検する御一行様
個々に分かれた御一行様。
その間、何があったかは各々しか知らない。


5.探検してきた御一行様

「おい! この辺に変なジャングルの王者が・・・って、何で丈峯はこんなトコで寝転がってんだ?」

2番目に帰り着いたのは来生であった。
その来生はなぜか浜辺で突っ伏して寝ていた1番目に帰り着いたと思われる丈峯の姿を見て怪訝な顔をした。
「オゥ! 来生くんデース。天嶽クンはキノコ食べて寝てしまいマ〜シた・・・。きっと食欲を満たされたので睡眠欲が出てきたのデース!」
近くで天嶽を見守っていたマドモアゼルがのたまった。
「・・ち、違うだろ! それって毒キノコだったんじゃねぇのか!? 見せてみろ!」
慌てて来生は近くに落ちていたキノコを拾い上げ一つ一つを鑑定していく。
「これはベニテングダケ・・・こっちはシビレタケ・・・」
名前を挙げてはポイポイと捨てていることからそのキノコたちが毒キノコであると推測される。

「何してるんですか??」
そこへ、みあおが戻ってきた。
両手にはいっぱいのアケビを抱えている。
「丈峯が毒キノコ食ってこの有様だ」
険しい表情で来生はみあおを見ることなく毒キノコを次々に海へとほおり投げている。

「あ、皆戻ってたのね。何か成果は・・・って、丈峯先輩は何してるの?」
「あ、シュラインさん。丈峯先輩、毒キノコ食べたらしいんです・・・」
戻ってきたエマと草間にみあおが今度は説明した。
「・・素人判断が1番怖いんだぜ? キノコって」
草間がそう呟いたあと溜息をついた。
「・・・ところで、1人戻ってきてないみたいだけど・・・」
エマがキョロキョロとその最後の1人を探して視線を泳がす。
だが、森の方から戻ってくる気配は全く感じられない。

 「ハイヨーシルバーーー!!」

突然、海から声がした。
「なに!?」
来生が、みあおが、エマが、草間が、マドモアゼルがそちらを見ると、そこには・・・

 「暴れザメーーーー!?」

そう、体長2メートルもあるかと思われるホホジロザメに乗った最後の1人・シオンの姿がそこに!!
「ロディオも久しぶりなのです!」
爽やかな汗を振りまき、シオンはそう叫んだ。
だが、それを楽しんでいるのはシオンだけ。
「お、おい! 早く逃げろ!!」
来生がそう叫んで海から遠のいた。
「あ! 皆さんもお帰りになってたんですね!? 今そっちに行きますから〜・・」
来生の叫びで浜にいた者たちに気がついたシオンはそういうと、サメの鼻先を浜辺へと向けた。

「来るんじゃねーーーーー!?」

・・・それは、誰の叫び声だったのか・・・。
気がつくと、シオンは浜辺にサメとともに打ち上げられていた。
そして、その傍らにはいつのまに起き上がったのか丈峯天嶽がはぁはぁと息を弾ませて立っていた。
「俺はサメの餌になんかなんねーぞ!」
「丈峯先輩、無事だったんですか!?」
みあおのその言葉に、天嶽は「あぁ?」と首をかしげた。
「無事って・・・みあおちゃん、俺の心配してくれるの!? でも、俺サメには食われてねぇよ?」
「憎まれっ子世にはばかるってヤツかしら? 丈峯先輩は毒キノコ食べたんですよ?」
「・・・マジで?! じゃあさっきの都井サンの分身の術はタダの幻覚だったって事?」
エマの言葉に、天嶽は嫌な汗をかいていた。
「・・・とにかく、全員揃ったならこれからのことを話そうじゃねぇか」

頭痛がするのか、来生は眉間を押さえてそう言った。


6.夜更けの御一行様
「俺は・・・ジャングルの王者らしき人影を見た。ツタを使って移動する人影だ。結局正体はつかめなかったが・・」
来生がそういうと、シオンがハイっと手を上げた。
「それ、多分私です〜。つい懐かしくて・・・」
テヘっと笑ったシオンに、来生は冷たい視線を無言で送った。
「じゃあ、木の上に登ってたのもおまえか?」
「・・・いえ、それは私じゃないです。私、その後でサメに出会ったものですから」
シオンがそう言ったので来生は再び考え込んだ。
と、再び別方向から草間が手を上げた。
「あ、それ俺。さっき木に登ってたっす」
「・・・お前らサルか?」
来生がポツリとドスの効いた嫌味を呟いたのであった・・・。

「あの・・・あたしが調べた結果なんですけど。島だと思ってたこの場所は、実はキャンプ場の裏だったんです」

みあおが仕切り直すように、そんな3人をさえぎりそう言った。
「あぁ、俺も見えた。反対側に建物の光やら見えたから間違いないと思う」
草間がそれに同意した。
「なら、話は早いじゃん。山の向こうのパラダイスはお約束! 山越えだよ! もう、山越えっきゃないっしょ!!」
握りこぶしを作り、天嶽が立ち上がった。
発言は微妙だが、山越えは確かに必要だった。
が、既に夕日が完全に海に没しようとしているこのときに山に登ることは賢い選択とはいえない。
「・・・船を修理できるように木や道具も集めてきたことだし、今夜は一晩ここで過ごした方が得策だろうな」
来生がそう言った。
「あ。私、水のありかを見つけておきました」
シオンがにっこりとそう言った。
「なんでー!? 山越えしようぜー??」
ブーブーと抗議する天嶽を無視し、みあおは近くにあった小枝を焚き火ができるように円錐形に置き始めた。
「ひとまず、火をつけませんか? 獣などが来ないように」
「そうね。来生先輩、ライター持ってましたよね?」
テキパキとみあおの手伝いを始めたエマがそういうと来生はライターをエマに投げた。
「ありがとうございま・・」
といいながら振り向くと、そこにはいつの間にかシオンがおり、摩擦熱で火をおこす火起こしの方法で既に火をつけていた。
「シオン先輩、すごーい!」
素直に感動するみあお。
だが、文明の利器であるライターをなぜ使わないのか!?
そんな謎を残しつつ、来生と草間は船の修理方法を検討していた。

「キャンプファイアーするデース!」

突然、大量の枯れ枝を抱えマドモアゼルがそう叫んだ。
「はぁ!?」
その突然の申し出に、誰もがそう言った。
ただ1人を除いては・・・。
「やろう! キャンプだし、オクラホマミキサーだし! キャンプファイヤーやろうぜ!」
天嶽が水を得た魚のように軽やかに復活!
みあおとエマとシオンが作った小さな焚き火に枯れ枝をドンドンとくべていく。

「ちょ、ちょっと、そんなにくべたら・・・!?」

エマの心配をよそに、天嶽とマドモアゼル、そしていつの間にか加わったシオンがドンドンその火を大きくする。
あっという間に、火は大きなキャンプファイアー・・といっても遜色のないものになった。

「やっぱこれだよなぁ!!」

満足げな天嶽。
そして、どこから取り出した(作り出した?)のか、シオンはマラカスをシャカシャカと振って火の回りを踊りまくっている。
「キャンプって楽しいですねぇ〜♪」
「これでこそ海デース! 青春デース!!」
マドモアゼルも、シオンからマラカスを1つ受け取るとシャカシャカと振りながら火の回りを踊り始めた。

「や、やっぱりこうなるのね・・・」
心のどこかでマドモアゼルに対して不安を募らせていたエマがそう言った。
「でも、楽しそうですよ? 帰れる見込みはついたんですし、折角ですもん」
みあおが微笑んでアケビを1つ、エマに渡した。
「・・・まぁ、これ以上事態が悪くなるとは思いたくないしね・・・」
エマが少し笑ってアケビを受け取った。
だが、エマの視線はマドモアゼルから外れることはなかった・・・。

「後始末が面倒だってのに、よくやるぜ・・・」
「まーまー。船も何とか直せそうだし、今日だけのことじゃないっすか。無礼講ってヤツですよ」
来生と草間がそう言った。
天高く燃えるキャンプファイアー。
そして、そのキャンプファイアーにさらに焚き木をくべるマドモアゼル。
調子に乗ると、痛い目を見るのがセオリー。

「あ!?」

くべすぎた焚き木。
燃え上がりすぎたキャンプファイアー。
そして事態は思わぬ方向へ・・・。


7.新聞に載った御一行様

翌朝、新聞の見出し。

 『山火事を消火した勇気ある高校生!!
   近くにキャンプに来ていたところ偶然火事に遭遇し消火活動を行ったという
   最近の若者にしては実に勇ましく、日本の未来も捨てたものではない・・・』

ど真ん中でピースをするマドモアゼルを筆頭に、その横で同じくピースサインをする天嶽。
反対側にはなぜかシオンまでもがピースサイン。
後ろでは冷たい視線を飛ばす来生。
どうしていいものかと困惑顔のエマ。
その横で丁度ため息をついたと思われる変な顔をした草間。
そしてとりあえず笑っておこうと笑顔を無理やりに作ったみあお。

・・・かくて、彼らが遭難したという事実は隠蔽され、勇気ある高校生として地元新聞に取り上げられた。

これもまた、キャンプの醍醐味・・・か?


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

0086 / シュライン・エマ / 女 / 2年A組

1415 / 海原・みあお / 女 / 2年C組

0883 / 来生・十四郎 / 男 / 3年C組

3356 / シオン・レ・ハイ / 男 / 3年C組

2042 / 丈峯・天嶽 / 男 / 3年B組


NPC / 草間武彦 / 男 / 2年A組
NPC / マドモアゼル・都井 /? / 3年B組



●【個別ノベル】

【0086/シュライン・エマ】
【1415/海原・みあお】
【0883/来生・十四郎】
【3356/シオン・レ・ハイ】
【2042/丈峯・天嶽】