●呼び込まれた者

「仕事の邪魔しないでくださいよぉ」
 三下の泣き声が、今日もあやかし荘に響き渡る。
 三下の部屋に転がり込み、細かい嫌がらせをして仕事を邪魔していたのは嬉璃。
 明日までに記事を一本を書くという、いつも通りに仕事を抱え込んだ三下は、半べそをかきながら編集部から借りてきたノートパソコンを嬉璃から死守している。
 あまりの必死っぷりを十分に楽しんだ嬉璃は、いい加減に飽きてきた事もあって、三下に聞いた。
「何の仕事ぢゃ?」
「あのですね。呪いのゲームとか何とかで‥‥」
 言いながら三下はノートパソコンを開き、スイッチを入れ、インターネットに接続してアドレスを入力する。
「このアドレスのページに入れると呪いのゲームが出るとかいう話なんですけど、ほらページが見つからないって‥‥」
「表示されたようぢゃぞ?」
 三下の意に反し、長い読み込み時間の後にホームページの画面が表示された。
 『白銀の姫』‥‥噂のゲームのページである。
「あわわわああああっ! 呪われる! 祟られるぅ!!」
 慌てて逃げようとする三下の襟首を掴み、嬉璃はニヤリと笑うとマウスを手にとった。
「仕事なのぢゃろ? どれ、一緒に見てみようではないか」
 言いながら入室ボタンをクリックする嬉璃。
「いやあああああだあああああああっ!」
 三下の哀れっぽい声が辺りに響いた‥‥‥‥

「嬉璃ちゃん、あんまり三下さんの邪魔を‥‥あれ?」
 恵美がドアを開けた時、そこに嬉璃と三下の姿はなく‥‥ただ其処には、『−Page Not Found−』の文字をモニターに映したノートパソコンが置いてあるだけだった。