●ネヴァンの章
陽光の差し込む城の中庭、花壇には色とりどりの花が咲き乱れ、植えられた木々は整然と並びながら緑の葉を茂らせている。
そんな場所で、女神ネヴァンは瀬名・雫に言った。
「確かにクロウ・クルーハは定められた敵‥‥なんだけどね」
「うんうん、で、もうちょっと近寄って話さない?」
困ったような笑顔を浮かべながら雫は、木の陰に隠れながら顔半分だけ出して話をしているネヴァンに言った。
対してネヴァンは、首をプルプル振って隠れ場所から出るのを渋る。
嫌と言ってる者を下手に弄くる気もなくて、雫はとりあえず適当に問いを投げた。
「あー、もう良いや。それで、竜がどうしたの?」
「クロウ・クルーハの力は強い。だから、彼なら世界の滅びを回避できるかも知れない」
木に隠れながら、ネヴァンは自分の思いと願いを語る。
「ボクは、彼こそが希望だと思うんだ。だからボクは‥‥クロウ・クルーハに逢いたい。逢って話をしたい。友達になれればと思う」
それは甘い考えだと他の女神から否定された考えだった。しかし、話し合えばきっとわかってくれると‥‥子供の様な純真さで、ネヴァンはそんな事を考えていた。
「それにね。クロウ・クルーハがこの兵装都市ジャンゴを壊すと、それがきっかけで不正終了が始まっちゃうんだ。それだけは避けないと」
不正終了‥‥それを防ぎたいと思うネヴァン。その為には、不正終了発生の鍵となる兵装都市ジャンゴ陥落イベントを起こさせなければ良い。
つまり、その前にクロウ・クルーハと仲良くなり、兵装都市ジャンゴへの攻撃を止めてもらえば良いのだ。
「避ける為に、クロウ・クルーハと友達になるの。手伝ってくれない? ボクの選んだ勇者様」
「OK〜☆ じゃ、握手!」
ネヴァンにニッコリ微笑みかけ、雫は手を差し出す。
ただそれだけなのに、ネヴァンはビックリした様で木の陰に完全に隠れてしまった。
「あ‥‥‥‥」
雫はどうしたものかと苦笑いを浮かべ、明後日の空を見上げる。
こんなで‥‥ネヴァンは本当にドラゴンなんかと友達になれるんだろうか?
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