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調査コードネーム:高峰温泉での休日をご一緒に 執筆ライター :秋月 奏 【オープニング】 【 共通ノベル 】 【 個別ノベル 】 |
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![]() 「温泉だね〜♪」 「て、言うか……女子高生ふたりで温泉に来てていいんでしょうか」 と言う会話を繰り広げるのは真鶴・ほくとに弓弦・鈴夏の両名。 のんびりとした休日を楽しむべく、高峰温泉へと遊びに来ているのだが……。 鈴夏はと言えば「こんな高そうなところに来てていいものか」と悩んでいたりして それを、ほくとが「平気平気♪」と楽しそうに笑っていたりする。 「良いじゃない! だって折角高峰さんが誘ってくれたんだし!」 「それもそうですけど……」 「はいはい、細かいことは気にしない♪ 温泉に美味しい料理を楽しもうっ? 勿論あたしたちと一緒しても良いって人も居るわけだし……何故か、猫さんも来てるし」 「……何かが起こりそうな気がするのは私だけですか、真鶴さん(汗)」 「…んー、これで廻も来てたら本当に何か起こりそうではあるけれど……と、とりあえず 温泉だ! いつもの疲れを回復させて次に備える! これ基本っ」 …かなり色々とあるような気がしないでもないような。 とりあえず、真鶴・ほくと嬢及び、弓弦・鈴夏や猫たちと高峰温泉で休日をご一緒に 過ごされる方――募集、である。 【ライターより】 共有NPCとなりました真鶴・ほくと嬢と女子高生コンビでの休日をご一緒に、です。 温泉は混浴ではないので女の子のみですが……男性が来られた場合は温泉では 猫たちと、になります。(その他の部分ではコンビとご一緒ですのでご安心を♪) では、ご参加、お待ちしておりますv |
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【共通ノベル】 戦い済んで陽が暮れる、そんないつもの日常と暫しの間別れを告げ。 ……とまでは、もしかしたら行かないかもしれないが、とりあえず温泉での休日、なのである。 とりあえずと言うと語弊はあまり良くないけれど、何より驚いたのは弓弦・鈴夏と真鶴・ほくとの両名だった。 …ハッキリ言って、これほどの人数が一緒に過ごしてくれると言ってくれるとは思わず「少なくても楽しめたら良いよね♪」と言う、心持ちだったのだから。 その中で、ぼそぼそと言い合う姿が、ふたつ。 「……ホンマ、来るの間違えたわ」 「何がだい?」 「何がじゃねえよ、このボケ猫! 何で俺が温泉来なきゃならんねや……」 「まあまあ、永良もそれほど怒るものではないよ? たまには息抜きもいいものだしね。それに」 「――なんや?」 「…これは後まで内緒にしておこう。長生きしていればこそ逢えるものもある」 「…俺には、いつも猫の言葉自体が不可解やで……」 等と言い合っているのは、唯一の男性参加者ともなる永良・暁野(ながら・あけの)。 猫と同じ、黒髪に銀の瞳を持つ陰陽師たる青年だ。 だが、彼にしてみれば最初に言った様に参加はどうしても間違えた感が否めなかったりもして、内心複雑なのだけれど。 複雑な気持ちのまま頭を抱えそうになる暁野を、ほくとと鈴夏が「まあまあ」と制し、「そうデスよ〜、こんな所デ、喧嘩良くナイでース!」と、にこにこ笑顔でフォローをするのはプリンキア・アルフヘイム。 かなり有名なメイクアップ・アーチストなのだが、今回は心配事もあり、多忙な日々ではあるものの友人らと過ごすべく何とか時間を作って、この高峰温泉へとやってきたのである。 心配事、と言うのは他でもない。 この場所にあって、まだ少しばかり暗い表情を浮かべている寒河江・美雪(さがえ・みゆき)の事に他ならず……どうやら、今現在かなりヘビーな恋愛背景があるらしく、少しでも気分転換になれば、と思ったのだが。 (中々上手くハ行かナイ様デース……) 笑顔を浮かべつつ、プリンキアは心の中でのみ、呟いた。 一方、別の方では。 女子高生同士と言うことで気があったのだろうか、暁野を制した後にほくとと鈴夏が楽しそうに喋っていた。 「おふたりは同じ学校なんですか?」 「そう! 今日は温泉に行けるって言うから沙羅を無理矢理連れて遊びに来ちゃった♪」 「無理矢理って……もう、祀ちゃん駄目だよ、そんな風に言ったら……沙羅だって、此処に来てみたかったんだから」 にこにこにこにこ。 邪気の無い笑顔を浮かべながら橘・沙羅(たちばな・さら)は、隣に居る赤い髪と勝気な瞳が印象的な少女、花瀬・祀(はなせ・まつり)へ、言葉をかける。 穏やかな花の様な沙羅の笑みに祀は、幾分照れた様に笑いながら「でも、ある意味ホントだしさ?」と言葉を継ぎ、逆に鈴夏たちへと問い掛けた。 「ところでさ」 「はい?」 「確か、参加人数六人って言ってなかったっけ?」 「ええ。確かに来られた方は六名と記憶していますが……」 軽く首をかしげ「?」と言う表情を浮かべる鈴夏。 それに、はたと気付きほくとが声をあげながら手をぽん!と叩く。 「ああ、もう一人の子はねぇ……ちょっと糖分補給に行ってる」 小ちゃい子だから色々食べてみたくもあるんだろうね――、そう言いつつ楽しそうに笑みを浮かべて。 糖分補給? そんな言葉に「それって一体……」と言いたくなりながらも二人の少女は顔を見合わせ、その後。 うーん……と、唸った。 ぱたぱた……。 部屋から幾分離れたお土産物を売っている店内では小さな足音が響いている。 「あれもおいしそうだし……えっと、えっと、あれもたべてみたいのねー♪」 試食用に置いてあるお土産を食べる小さな、影。 蓬莱も相手が小さな女の子ゆえに、にこにことそれらを見守っている。 そして、この少女こそ六名の参加者の内の一人、寒河江・駒子(さがえ・こまこ)であり、美雪とプリンキアが連れてきた、もう一人の人物でもあった。 + (何や、居心地悪いな……) ふと、周りを見渡し再度、溜息。 先ほどまで居た数名も、今は「色々と見なきゃ損だよね!」とか「そろそろ浴衣選びに行こっか?」と言いながら席を立ち……。 何故か無理矢理、此処へ連れて来た猫は何時の間にか男性陣へ用意された部屋へでも向かってしまったのか影も形も無く、暁野の表情はまるで苦虫を噛み潰したような顔に変化し……再び。 「デスから…アナタ、そうイウ顔するイケませんネ〜! ラッキーが逃げテ行きマスでスヨ?」 と、プリンキアに諭され溜息もつけず天井を見る。 …高い天井だ。 これだけで、建物の古さ…いや、伝統がわかるというもので昔ながらの工法を使われたであろう、それらは素晴らしいまでに、しっかりとした造りを持っていた。 高峰という女性が冗談交じりに100年程前、とも言っていたが成る程、そう言わしめるだけのことはあると「ふん」と呟く。 そして、あからさまに立ち上がると、 「ちっとばかし、猫探してくるわ。あいつが居らんと俺、どーも居心地悪いねん」 「あラ…ソウですカー? デはマた、夕ご飯の時ニでも逢いマしょウ♪」 「ああ」 ひらひら、お互いに手を振り合いながら、そう言いあうと、くすりと深雪が微笑んだ。 おかしくて微笑んだと言うより、何処か……言葉を素直に紡げるのを羨ましいと思うかのような寂しげな笑みで。 「……良いわね」 「何ガですカ?」 「貴方たちが……気分転換に、此処に誘ってもらったけれど、どうしても私は……」 言いかけた言葉をプリンキアは深雪の唇に指を乗せることで黙らせた。 綺麗な丸い形をした瞳が驚いたようにプリンキアを見つめ、そして。 ――瞳を伏せた。 三つ編みの髪が心もとなげに、揺れる。 「ストップ。……アナタが言いたい言葉ヲ、これ以上言うノ私ハ、許しマせんヨ?」 「………」 深雪は、ただ首を振る。 己の考えが変わらないことを示すかのように――強く、強く。 + 場所は変わり、浴衣のサンプルが置いてある場所へと足を運んだのは祀と、沙羅の二人。 傍目にも本当に仲の良い親友同士に見える二人は楽しげに、浴衣のサンプルをひたすら見ていた。 蓬莱が着ているデザインと同じ浴衣なのだが、色合いが様々にあり、それにより雰囲気が変化しているものもあったりして、どれも着てみたい!と言う甲乙付け難いものになっていた。 「わ、色々な浴衣があるね、祀ちゃん♪」 「うん。どれも沙羅には似合いそう……んー、どれにしよっか?」 どれでも好きなタイプのものをご用意しますよ?と蓬莱は言っていたけれど、あちらの色もいい、こちらの色もいいと悩んだ末、結局。 「そうだ!」 「な、何?」 「この際だから、お互いの浴衣選びあわない? それも楽しいと思うんだ♪」 そう、言われぱちぱちと瞬きを繰り返す沙羅。が、漸く祀の言わんとする事を理解すると。 「うん♪」 じゃあ、祀ちゃんに似合う浴衣選んであげるね?と、ゆっくり首を傾げながら沙羅は真剣に祀と浴衣を見始めた。 無論、祀も同様に「どれが一番可愛いかな……」と手に取り時に沙羅の肩に合わせながら。 + 「んー……あの子、糖分補給終わったかなあ?」 長い廊下を歩きながら、ほくとは隣に居る鈴夏へと話し掛けた。 「寒河江さん…じゃない、駒子ちゃんの方ですか? どうでしょう、お土産屋さん覗いて見ます?」 「そうだね、お土産の目星を付けておくって言うのも良いよね」 「はい」 そして、ほくとと鈴夏が、この場所から一番近いお土産屋さんへ向かうと。 「ももまんじゅー、おいしいねー♪」 桃饅頭を食べ、にこにこな駒子の姿が見え……「もうじき、夕ご飯の時間になるよ?」と、ほくとが笑いながら駒子の頭を撫でた。 「えへへ☆」と笑う駒子。 「あのね、あのねっ! まんじゅーぱわーでせんにんりきなの! きょうこそはこまこ、ぷーちゃんにかつのね!」 「…リベンジ?」 あまりに駒子に似合わない、ある言葉を鈴夏は呟き……其の言葉に、ぴくん!と駒子は反応した。 どうやら正解だったらしい。 「そうなの! こまこはちいちゃいから、たっきゅういっしょにやっても『つまらない』って、ぷーちゃんはいうのね? でも、こまこはまけないの! きょうこそかつの〜!!」 ……卓球? お互いの顔を見るほくとと鈴夏。 やはり卓球と言うとアレだろうか……温泉でよく見る……休憩室に良くある、あの? …温泉勝負は中々深いものらしい、と駒子と、部屋に居るプリンキアを思い、知らず知らずの内に二人は。 「「頑張って?」」――と、駒子に呟いていた。 夕飯後のチキチキ(?)温泉卓球試合を楽しみにしてしまった自分自身たちに気がつきながらも。 + 「うわぁ……」 蓬莱に頼み用意された浴衣を着、「いっせーの!」で試着室から出た祀が一番初めに発した言葉は感嘆にも似た溜息、だった。 白地に襟や袖の部分に桃色の切り替えが入った浴衣は、沙羅の色白さを引き立てて余りあるほどで祀は、うんうんと頷き、 (可愛い……! あたし最高! あたしの見立てに間違いは無かったねっ) ――そして思わず。 「沙羅やっぱり可愛すぎ〜〜!!」と抱きついていた。 祀に抱きつかれ、じたばたしつつ「あのね、あのねっ」と沙羅も負けじと「うんっ、祀ちゃんも凄く似合ってるよ?」そう呟き、にっこり微笑んだ。 実際、緋の色は本当に祀に良く合うし、緋の色とまた違う黄色の切り替えが細身の身体を更にすっきりと見させていた。 凛々しくて、きりりとしてて……本当に羨ましいほどに自分とは、違う祀。 (なのに可愛くもあって…祀ちゃんも自分の魅力って解って無い、よね……) 沙羅の思いを感じ取ったか、途端、祀の顔が朱に染まり、 「…へ?あ、あたしは似合わないよぉ、沙羅のが何十倍も可愛いって!」 照れ隠しのように更に腕の力を強めて、抱きついてしまう。 …本当に可愛い子に「良く似合ってる」と言われると照れが来てしまうと言うか、何と言うか……色々複雑な気持ちになってしまうのだけれど。 「そんな事、無いのにな」 にっこりと、再び花のように沙羅は微笑う。 祀が沙羅に敵わないな、と素直に思うのはこういう時だ。 照れ隠しに強めた腕の力を弱め、「そろそろ夕ご飯出来たかな?」等と話を切り替えながら沙羅の手を握る。 「行こっか♪」 「うん♪」 まだ心持ち、頬に朱が走っている祀を沙羅は何も言わずについていく。 こう言うところが凄く可愛いくて大好きな所だから。 だから沙羅は、いつも祀の一歩後ろを歩いて。 振り返ってくれる祀の表情を楽しみにしている自分を知って居るから。 + (…猫、おらへんなあ……ったく、あの化け猫は……!) 呟きつつ暁野は黒尽くめの青年を探す。 が、広すぎる旅館と言うのは人一人を探しにくいと言うネックもあり…中々見つからぬまま、戻った方が良いのかと、動きを止めると。 「永良、そろそろ夕飯だよ?」 そんなのんびりとした声がして。 「あ!?」と叫んでしまう暁野だった。 「何や、何処に居ったん?」 「何処にも?」 「は?」 「まあ、それもまた後で、そう温泉の後にでも話すよ。そして、其の前に夕飯があるのだけれどね」 「ハイハイ……じゃあ、戻るかね」 元居た場所へと戻るべく歩き出す暁野に更に猫が一言。 「ああ、そうだ……永良」 「うん?」 「永良の浴衣を選んでくれと蓬莱が言うから勝手に選んでおいたから。大丈夫、永良でも着れる様な黒と臙脂の組み合わせの中々…面白い浴衣だから」 ひくり、と暁野の口が引き攣った。 …我慢も限界なのだろう、どう言えば良いのか考えているように見えるほどだ。 「あんな、猫」 「なんだい?」 「…そう言うのは俺抜きで勝手に決めんなや……頭痛いわ…ホンマ」 はぁ。 溜息を一つ、吐き――その後は無言で二人とも部屋へと歩いていった。 + そうして、その後。 面々は、出された夕食に舌づつみを打ちつつも楽しい一時を過ごし……お酒で盛り上がる、と言う面子でも無かった所為もあるだろう、そのまま皆でなだれ込む様に温泉へと向かって行った。 …無論、男性陣は仲良く(?)男湯へと直行、なのだが。 この場合、そそくさと女性陣に押されるように暁野と猫は歩いて行きつつ。 温泉と記された場所の先にあるのは…露天風呂であり、春とは言え、まだ冷えた空気が何処かから舞い込んでくるかのようだ。 が、脱衣所の窓から見える景色は素晴らしい物であり煌々と輝く月と遠くにかかる森の木々が絶妙なまでに自然でなくては創り得ない美しさを形作っていた。 まるで絵の中にいるかのような不思議な感覚に、ただただ言葉もなく見惚れてしまう。 …言葉が出てこない美しさと言うものがある。 そんな事をまざまざと実感しながらも、楽しそうに駒子が一番最初に湯へと向かい……大きな、音が響いていく。 その後にプリンキアが「暴れルの、禁止デーす!」と駒子に注意するべく向かい、ややあって深雪や鈴夏、ほくとがそれに続く。 が。 「……沙羅、皆行ったみたいだよ?」 「う、うん! ……皆凄いね…ぱぱっと脱げて……」 どうしても沙羅は恥ずかしくて駄目……うな垂れながら呟く沙羅へと祀は「人それぞれ苦手なこともあるってば」そう切り返す。 「でもさぁ…沙羅って意外と」 「え?」 「こうして見ると胸、大きいよね。学校に居る時はそうは思わなかったけど」 「あ…あの、あのねっ?」 まじまじと見られ、わたわたとタオルで隠す沙羅に祀は、にやりと笑い。 そして浴衣をきちんとたたむと漸く二人は皆のいる湯の方へと歩いていった。 「あ、おねえちゃんたちもきた〜♪」 駒子がざばざばと音を立てながらふたりの傍へ寄る。 「どう? 気持ち良い?」 「うん! ごくらく、なの!」 「……そう言えば」 極楽、と言った駒子に反応するように深雪が呟く。 「良く温泉に入ると"生き返る"という人と"極楽"という人が居ますが…一体どっちなんでしょうね」 考えるとおかしくないですか?、微かに深雪は笑むと皆へと聞いた。 「あれじゃない? 疲労度にもよるんじゃない?」 そんな考えを示したのはほくと。 「で、その心は?」と鈴夏が聞くと。 「慢性疲労と、本当にどうしようもない疲れの時の差っ」と返って来て……なるほど、奥が深いものだなあと思いながら「ハテ?」と首を傾げるプリンキア。 「ト、言いマスと……ミーの場合は……どちら、なのデしょうカ?」 日本語、奥ガ深すぎデスねー?と考え込むプリンキアに祀と沙羅は。 「忙しいのも大変なんだな……」と、しみじみ考えてしまった。 実際、此処に居る面子で、深雪は気象予報のアナウンサーとして良く見かける顔だし、プリンキアもプリンキアで、メイクアップアーティストとして常に一線を走っている女性であるだけに「生き返る」も「極楽」もどちらも当てはまるような気がした。 ……そして、祀の思いがけないところで、沙羅の反撃が開始されている事を祀は気付かなかった。 じっと見られているのも別段気にはしていなかったのだが……不意に沙羅が少しばかり顔を赤らめながら祀へと、ぽそりと言う。 「ね、祀ちゃん?」 「んー? ああ、本当に温泉って気持ち良いねー♪」 「祀ちゃんって…意外と、薄かったのね」 「薄い? …薄いって、何が……」 言いかけ、はた、と気付く。 薄いって、薄いって――胸の事? 気にしている事柄だっただけに、ずーんと沈みきってしまう。 ぶくぶく…と祀は湯に沈み、更に。 其処から、先ほどの言葉のみのセクハラではない、本当のセクハラをした。 「どーせ、あたしは、沙羅みたいに胸ないしーー!!」 ぷに、と後ろから触れ、沙羅の顔が赤く染まる。 「きゃ……きゃああああっ」 「あらあら、仲がいいのね?」 叫ぶ沙羅に対し深雪は微笑ましくそれを見、駒子が「なかよきことはうつくしきかな、なの!」と言い……鈴夏とほくとが「いや、それは……」とも突っ込めないまま――プリンキアの「スキンシップ、大切デス♪」で全てが締め括られ、沙羅は泣いて良いのか笑って良いのか、微妙な心境を味わえてしまい「あはは……」と乾いた笑いを、無意識に口から出してしまっていた。 + 「サテ……温泉にも入りマシたシ……」 プリンキアは温泉から出ると休憩室で飲み物を飲むことも無く、腕まくりをすると、びし!とラケットとボールを高く掲げた。 周りの目が、駒子に鈴夏、ほくとを除いては、丸く、丸く変化する。 だが、プリンキアはそれに構わず 「ジャパニーズ温泉の醍醐味ッ…1ニ卓球2ニ饅頭ゥ、34がナくテ5に玉子ッ!!」 ――そう、叫んだ。 ……何かが微妙に違う気がするのは気のせいだろうか……いや、気のせいではないかもしれないが……周りに、それらを突っ込むチャレンジャー…もとい、勇気ある人は居なかった……深雪を除いては。 「プリンさん、それは何かが違う気がするわ」 「…エ?違いマスカ?」 「ええ……」 こっくり深く頷く深雪に「hm……」と考えるが、結局。 「違ったトしてモ、折角のバケイションでース、エンジョイしますヨー!!」 ショウブでース!! 其の言葉にぴくりと駒子は反応し「きょうこそはまけないもんっ!」と言いながら何故か。 「こまこには、りんかおねーちゃんも、ほくとおねーちゃんも居るんだから!」…そして、ふたりを前面に押し出すと、プリンキアの瞳がきらーん☆と獲物を見つけた豹の様に、怪しく光った。 ……其の光景を見、祀はぼそりと呟く。 「プリンキアさんの背に某漫画のような炎が見えた……」と。 更に、其の言葉に沙羅が深く頷き、 「つい先日やってたドラマみたいだったね……」そんな感想を述べ、深雪がそれらを纏めて。 「プリンさん、温泉に来ると卓球勝負に燃える人だったなんて……」 蚊帳の外に放り込まれた様な三人は興味深く、この勝負の動向を見守っている。 卓球のルールを良く知らずに押し出された、鈴夏とほくとの心の叫びを知ることも無く。 + 結局。 卓球勝負はプリンキアの圧勝に終わった。 ルールを知らない女子高生が温泉卓球に燃える人に敵うわけが無いのである。 スッキリしたような表情を浮かべるプリンキアに、涙目の駒子を見るのは辛かったが、それらは「桃饅頭に蓬莱クッキー、帰りに買ってあげるから♪」で、帳消しになった。 とは言え。 「…卓球って地味に見えて中々ハードだねー!!」 と言う、ほくとの感想が全てを語っていた。 頑張って、と駒子に言った筈の言葉が自分たちに回ってくるとは思わなかった――全てを端的に語っているような言葉でも、ある。 漸く布団の上に横になれた時、深雪の柔らかな声が二人へと、かかった 「ふたりとも、お疲れ様。大変だったわね、中々…興味深く見させてもらったわ」 「あはは……ぶっ!?」 起き上がり「どうも」と言おうとした瞬間に、ほくとの顔に柔らかい何かが、当たった。 隣に居る鈴夏を見ると、ぐったりとぐうの音も出ないのか目を瞑ったまま。 じゃあ誰が…と思うと、今度は背に、同じく柔らかなものが! 「な、なんだっつーのよ!?」 「えー? さっきのプリンキアさんじゃないけど旅行と来たら枕投げっしょ? うっふっふ…受けてみなさいあたしの弾丸サーブ!」 そして、次に祀が投げた枕は見事深雪に命中し、深雪も深雪でむんずとその投げられた枕を掴み、投げた。 だが投げたのは祀へではなく、わたわたしてしまっている沙羅の方へだ。 が、敵も去るもの引っ掻くもの。 見事なまでに枕をブロックし、涙目になりそうな沙羅へと微笑むと、 「…っと、もー、怖がンなくても大丈夫! 沙羅は絶対、あたしが守ってあげるねっ」 そう言い、プリンキアにも駒子にも、眠ろうとしている鈴夏にさえも枕をどんどんと投げ始めた。 こうなると、もう誰も彼もに投げてしまったもの勝ちで、沙羅も祀の後ろにそっと隠れると、「えいっ」と投げた。 ぽすんと音を立て鈴夏へとぶつかった筈の枕は何故か召還した式神により弾き飛ばされ……「そんなのアリーーー!?」とほくとが叫ぶ。 こくこくと、祀も沙羅も、ほくとに同意を示すように頷く。 ありえない、と言うよりずるいではないか! が、「アリなんです!」そう叫び、また布団へと沈んでいく……卓球で疲れたのか、少々キレ気味の鈴夏である。 これがアリと聞いて周りは既に様々な(枕以外の)ものも投げ始め、完璧に枕投げならずや投げあいっこ、に変化してしまい……。 「……隣の部屋は賑やかだねえ」 「…賑やか過ぎや。休日ってのは、ゆっくりするもんやで?」 と、横になっている猫と暁野の呟きがあったが……無論、其処で終わるはずなども無く。 「おにーちゃんたちも、なげあいっこやるの!」と、襖を開けられ、布団の上で駒子に「おきなきゃだめなのね!」そんな風に言われると、大きなバッグが暁野に当たりそうになり、思わず(身の安全を含め)ひょいと避ける。 綺麗な落下点を描いて落ちるはずも無く、バッグは凄い音を立て畳へと滑り……。 避けた暁野へと皆の白い視線が集中する。 「男性ならヨケる感心シマせーん!」 プリンキアに言われ、周りの女性連及び猫にまでうんうん頷かれ、何でやねん……と呟きたくなるのを堪え「参加すればええんやろ?」……半ば諦めの境地で枕投げ……もとい、投げあいっこに参加する事にした。 どうせ猫に何か言われて、「うぬぅ」と叫ぶくらいであるならば自主的に参加した方が疲れも減ると言うものだ……多分。 後はもう、疲れて眠るまで、または降参するまで果て無き戦いは続き……。 戦い済んで、陽は暮れ……夜が訪れても。 帰りの――その時までは、皆で楽しもう。 折角の休日なのだから時には――、全て忘れて。 ・End・ □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ ■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■ □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ 【0174 / 寒河江・深雪 / 女 / 22 / アナウンサー(気象情報担当)】 【0291 / 寒河江・駒子 / 女 / 218 / 座敷童子(幼稚園児)】 【0818 / プリンキア・アルフヘイム / 女 / 35 / メイクアップアーティスト】 【2401 / 永良・暁野 / 男 / 816 / 陰陽師】 【2489 / 橘・沙羅 / 女 / 17 / 女子高生】 【2575 / 花瀬・祀 / 女 / 17 / 女子高生】 【NPC / 弓弦・鈴夏 / 女 / 16 / 女子高生/式神使い】 【NPC / 真鶴・ほくと / 女 / 17 / 女子高生】 【NPC / 猫 / 男 / 999 / 庭園の猫】 |
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【個別ノベル】 【0174/寒河江・深雪】 【0291/寒河江・駒子】 【0818/プリンキア・アルフヘイム】 【2401/永良・暁野】 【2489/橘・沙羅】 【2575/花瀬・祀】 |
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