●「学園祭」 オープニング
9月10日――時刻は間もなく11日を迎えようとしていた頃合だ。
神聖都学園高等部生徒会長である繭神陽一郎の姿が、校舎6階の生徒会室にあった。他に生徒会役員などの姿は見当たらない。陽一郎1人きりだ。
週が明ければもう学園祭。その最終準備のため、今の今まで仕事をしていたのかもしれない。事実、陽一郎の使う机の上には一面に書類が広がっていたのだから。
しかし、真夜中のこの時刻まで残っているのはごく僅か。残っている者は作業が押しているためか、あるいはよりよい結果を求めるために作業を続けているかのどちらかであろう。陽一郎がどちらに入るのかは知らないが。
「……どうあっても、わたしはそうする運命か……」
険しい表情を浮かべ、つぶやく陽一郎。そして何やらポケットより『石』を取り出すと、じっとそれを見つめていた。
数分後、生徒会室より気配が消えた。だが、そのことを知る者が居るかどうかは分からない――。
週明けて、9月13日。
待ちに待った学園祭がやってきた。
一般客も多く学園を訪れる、とても楽しい、夢のような5日間がやってきたのだ。
当然のことだが、この期間は授業は一切ない。まさに夢のようである。
一般客をまだ受け入れていない学園内では、生徒たちがせわしなく動き回っていた。本当に最終の準備を行っているのだ。
そんな中、ある生徒2人がこんな会話を交わしていた。
「あー、しんど……」
「おいおい、学園祭の初日から疲れててどーするよ」
「馬鹿野郎。こちとら今朝6時まで準備やってたんだ……寝てねぇんだよ」
「ははは、勝った。俺は7時だ」
「てめぇの方が負けてんじゃねぇか!」
「俺元気だもん」
「たく……。そーいや、元気で思い出したけどよ。何か、生徒会やら風紀委員の連中、張り切ってないか? 俺が6時過ぎに顔洗いに出てった時には、もう巡回始めてたぞ?」
「あー、聞いた話だと美化委員もそうらしいな。こないだから学園の美化だとか言って張り切ってるし、何でだろうな?」
「さあなー。学園側から言われたんじゃないか? きちんと見回れとかさー」
「かもなー。問題とか起こしたくないだろうしな。問題起こしたら学園祭も中止になるかもしんないしな」
「それはそれとして、お前今日はどこ回るよ」
「そうだなあ……『SHIZUKU』のステージとか?」
「お前、『SHIZUKU』のファンだったのかよ!?」
彼らの会話にもあるように、生徒会を筆頭にして風紀委員会や美化委員会の面々はすでに巡回を開始していた。両委員会の委員長はもちろんのこと、生徒会長である陽一郎自らも巡回を行っているのだから、その気合いのほどが伝わってくるというものだ。
「…………」
月神詠子は1人校舎内の巡回を行っていた陽一郎の姿を、廊下の壁にもたれかかって無言でじっと見つめていた。
やがて陽一郎が詠子のそばを通り過ぎる。その一瞬、陽一郎は詠子の顔を見ることもなく、擦れ違いざまに言葉を投げかけた。
「せいぜいこの学園祭を楽しむがいい。きみにとって、最初で最後の学園祭だ」
そして詠子は、通り過ぎてゆく陽一郎の背中に向かって、ぽつりつぶやいた。
「……言われなくてもボクは楽しむよ」
その瞳は、何かを悟ったかのような目をしていたのは気のせいだったろうか。
「あ、居た居た。月読さーん、今日どっか回る予定あるの?」
誰かが詠子を呼んだ。続けて何か言おうとしていた唇がぎゅっと結ばれ、詠子は声のした方を振り返った……。
こうして、夢のような5日間の学園祭が始まった。
誰にとっても、悔いの残らぬ学園祭であることを祈らずにいられない。
さて――あなたは5日間どのように過ごしますか?
●ライターより
〈ライター主観による依頼傾向(5段階評価)〉
戦闘:1?/推理:?/心霊:?/危険度:1
ほのぼの:5/コメディ:4/恋愛:?
*プレイング内容により、傾向が変動する可能性は否定しません
*オープニングに出ていなくとも、神聖都学園の有名人8人+三下忠、草間零は学園祭に参加しているものとしてプレイングをしていただいて結構です
*基本的に、9月13日〜17日の出来事を扱います
*今回、1つの行動に対し日付あるいは期間が指定されていない場合は、こちらで適宜当てはめさせていただきます
*自由に動いてくださって結構ですが、望んだ結果通りになるとは限りません
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