●「学園祭」について
9月13日〜17日の間、
「学園祭」を開催いたします。
学園祭期間中には、毎日様々な
メインイベントが行われますが、
それらとは別に、個人・グループ・団体による
「出し物」を募集しております。
この機会に是非ともご参加し、お楽しみください。
●「学園祭」 グランドオープニング
校内は学園祭の準備一色。誰もが楽しそうに、出店だ、アトラクションだ、部の活動発表だと、準備に駆け回っている。
が‥‥草間武彦は面倒くさがりだった。
「まったく何が楽しいのやら‥‥」
学園祭の準備から逃げだした草間は、サボりを決め込んで、校舎裏をふらついている。
流石に校舎裏まで来ると人はいない。クラスからの追っ手もここまでは来ないだろう。そんな事を考えていたその時‥‥草間は彼女を見た。
校舎裏で、地に膝をつき、胸を押さえて苦しげに表情を歪める月神詠子。
草間はすぐに駆け寄り、聞いた。
「おい、大丈夫か!?」
声を掛けられ、初めて草間の存在に気付いた様子で月神は、蒼白な顔を上げて呟く様に言う。
「来ないでくれ‥‥」
「? おいおい、そんな顔色で来ないでって言われても‥‥」
草間が軽い口調で言い返す‥‥その時だった。
月神の手が、草間を狙って一閃される。草間はとっさに半歩だけ後ろに跳ぶ事が出来た。
直後、引き裂かれたシャツの切片が宙を舞う。その向こうで、月神の苦痛の表情が、まるで泣いているかのような表情へと変わった。
立ち上がり、月神は自分の手を呆然と見‥‥そして次に草間を見る。
引き裂かれたシャツ。露出した胸の部分に、四筋の浅い切り傷。滲み出、流れる血‥‥
「違う‥‥ああ、ダメだ‥‥」
月神の苦痛をこらえるかのような声。その時、二人からやや離れた場所から声がかけられた。
「‥‥君は面倒を掛けてくれるな」
其処に立っていたのは生徒会長、繭神陽一郎。そして、彼に従う風紀委員達。憎悪するような、哀れむような目で月神を見ながら繭神は言う。
「もはや、これ以上、放っておく事はできない。それなりに楽しい夢の時間だったが、夢を終らせる時が来たようだ」
「嫌だ! ボクはまだ‥‥」
その言葉を受け、月神は語気鋭く言い返し、それから急に口調を弱め‥‥そして踵を返すと、逃げるように走りだした。
「月神!?」
「待つんだ」
名を呼び、後を追おうとした草間を、繭神の声が引き留める。繭神は風紀委員達と共に月神を追って歩き出しながら、草間に向けて言った。
「君には何も関係ない、これ以上関わるな。それより、最後の学園祭を楽しみたまえ」
結局、月神と繭神を追う事はせず‥‥草間は校舎裏を出て、学園祭の準備が行われている校舎の中に戻った。
学園祭の準備。出店の飾りや小道具、衣装を作る者。アトラクションの練習をする者。部活動発表の為の資料を作る者。誰もが楽しそうだ。
月神の苦痛の表情や、繭神の憎悪の表情とは全く無縁に。
草間は、ポケットの中から「石」を取り出して見つめる。何の意味があるかはわからない。だが、繭神が拾い集めていた「石」だ。
「最後の学園祭‥‥」
草間の呟きは学園祭準備の喧噪に消えた‥‥
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