【タイトル】 飲茶店 文月楼
【執筆ライター】 藤杜錬
【参加予定人数】 1人〜4人前後
オープニング /ライターより /共通ノベル /個別ノベル


●「学園祭」 オープニング

 人気の全くない校舎の屋上で二人の少女がため息を付き合っていた。
二つしかない小さなテーブル数客の椅子と、肉まんと烏龍茶しかメニューのかかれていない看板、それにいくつかの保温ポット、それがこの屋上にある全てであった。
そしてこの屋上にいるのはこの飲茶の企画人の佐伯隆美(さえき・たかみ)と佐伯紗霧(さえき・さぎり)の二人の姉妹だけであった。

「やっぱりこんな場所じゃお客こないよ。
さすがにいくらなんでもこれは無茶だったと思うよ、お姉ちゃん……。」

 校舎の屋上から寂しそうに活気がにぎわう校庭を見ながら黒いワンピースに身を包んだ紗霧がため息をつきながら白いワンピースに身を包んだ隆美に話しかける。

「そんな事言ったって、ここくらいしか場所が残ってなかったんだから仕方ないじゃない。」
「それもこれもおねえちゃんがいきなり思いつきで、お店を出そうとか言い出したのが悪いんじゃない。」
「紗霧だって、やろうって言った時はあんなに賛成してくれたじゃない。」
「あの時はこんなに何も考えずにやろうと思っていたなんて思わなかったんだもん。」
「考えてないってなによ、考えて無いとは……、って言われても仕方ないか、この状態じゃ。」

 隆美が思いつきでやろうと言い出して勢いで突き進んでしまった為に、周りに対しての下準備も殆どできずに来た為に、手伝ってくれる人間も妹の紗霧だけで最低限の物しか用意できなかった現状を見て苦笑する。

「でもこのままじゃ仕方ないし、そろそろお店を閉める準備をしようか?」
「そうだね、このままじゃ仕方ないし、そうしようか。でも…もう少し人手があったら、よかったのにね。」
「確かにもう少し手伝ってくれる人達がいたらもっと呼び込みできたろうし、場所ももっといい場所を使わせてもらえたかもしれないわね。」

 隆美は少し残念そうに話しながら片付けようと立ち上がる。

『思いつきだったけど、こんな形じゃなくて、ちゃんと成功させたかったな…。』

 隆美は心の中で自分の甘さを残念そうに後悔する。

「殆ど持ってきた物も残っちゃってるよね、これどうしよう?二人で食べるって言ってもとても処理しきれないよ?」
「うーん、どうしようか?残る事は考えてなかったからなぁ。」

 保温ジャーを覗き込んでポットから自分が飲む用のお茶を紙コップに注いだ紗霧が椅子に腰掛けて困ったように話しかける。
丁度その時であった、屋上へ上がってくる階段から人の姿を現したのは……。


To Be Continued...




●ライターより

屋上にある佐伯隆美、紗霧の姉妹の企画した人気の無い飲茶店にお客として遊びに来てください。
オープニングにもある通りお客がこないので、片付けようとしていますが、もし協力してお客を呼び込むのに協力しても普通にお客としてきても構いません。
基本的にほのぼのなシナリオになると思います。
飲茶にあるのは、ポットに入った暖かい烏龍茶と保温ジャーに入った肉まんしかありませんのでお客さんとしてくる方はご注意を。

このシナリオに参加するスタンスとしては『協力してなんとか盛り上げる』『普通にお客として遊びに来る』『その他』が基本になると思います。

でて来るNPC二人のクラスは以下の通りです。

佐伯隆美(3−A)
佐伯紗霧(1−C)

それでは飲茶店文月楼にてプレイングをお待ちしています。



●【共通ノベル】

 片付けを始め様とした佐伯隆美(さえき・たかみ)と佐伯紗霧(さえき・さぎり)の二人であったが、屋上へ上がる階段を走って上ってきた人影がある事に気がついた。
それは紗霧と同じクラスの絢和泉汐耶(あやいずみ・せきや)であった。
逃げる様に走ってきた汐耶は屋上に着いた途端、屋上にある物を確かめる事もなく、ただ階段の方を気にしながら乱れた息を整える。
そして息もだんだん整ってきた処で改めてたった今、自分がやってきた屋上を眺める。
そこには飾り気のない数セットのテーブルとあまり目立たない看板、そしてクラスメイトである紗霧の姿がある事に気がつく。

「はぁはぁ、ここまでくれば…大丈夫よね?
って、あれ?こんな所で何をやってるの紗霧ちゃん?」

 汐耶はクラスメイトである狭霧が、こんな人気のない屋上にいるのが不思議だ、とでも言うように話しかける。
話しかけられたのもあって、紗霧が汐耶に事情を説明をしに行く事になり、ついでにオーダーをとって来てと隆美に言われてゆっくりと汐耶の方へ向かって歩き出す。
その後ろでは隆美は片付けようとしていた手を止めて、オーダーを受ける準備を始める。

「あ、汐耶さんいらっしゃいませ、私たちここで飲茶をやってるんですよ。」
「こんな人気のないところで飲茶を?」

 汐耶は改めて回りを見渡す、どう見てもお客が少ない、と云うよりも全然いないいわゆる閑古鳥が鳴いているという状態であった。
ため息をついている汐耶の様子を見て狭霧はただ苦笑するしかなかったが、気を改めてオーダーを取ろうと話しかける。

「それでオーダーは何にしますか?…って言っても烏龍茶と中華まんしかないですけどね。」
「そう?それだけだったら肉まんを一つと烏龍茶を頂けるかしら?」
「はい、わかりました。肉まん一つと烏龍茶一つですね。」

 汐耶は適当に空いている椅子に座りながら、オーダーを取りに来た紗霧に自分の注文を手早く言うとほっと一息つく。
最初は嬉しそうにオーダーをとり隆美からオーダーされた品を受け取り汐耶の元に持っていった紗霧であったが、そんな汐耶の様子を見て少し心配そうに話しかける。

「あの、汐耶さん大丈夫ですか?なんか慌てて走ってここまで来たみたいだったし。
何か嫌な事でもあったんですか?」
「あ、そういう訳じゃなくて…、紗霧ちゃんはうちのクラスの人が喫茶店をやろうって言っていたのは知ってるわよね?
「はい、なんかみんなすごく楽しそうにやってましたね。
でもそれと逃げるのがどういう関係が?」
「喫茶店まではよかったのよ、でも皆が調子に乗って私に男子用のタキシードを着せようとするからつい逃げてしまったのよ。」
「そうなんですか……、確かに大変でしたね。
でもみんなの気持ちも何となく判る気がします、汐耶さんそういうのすごく似合いそうだもん。」

そういって無邪気に笑う紗霧を見て汐耶は何もいえなくなってしまう。

『ま、紗霧ちゃんがこうやって普通に楽しめるんならこれはこれで良いかな?』

 お茶を飲みながら汐耶がそんな事を考えていると、屋上に上がってくる階段から二人の人影が現れる。

「やれやれ、こんな所でお店を開いているなんて言ってくれればよかったのに。」
「あ〜、ここかな?お姉さんが言っていた人達のやってるお店って…。」

 各々そういった事を呟きながら姿を見せたのは、隆美と同じクラスのモーリス・ラジアルと二年生の海原みあお(うなはら・−)であった。
そして隆美と紗霧の姿を見てモーリスは驚いた様に思わず眉をひそめる。

「あれ?この飲茶って隆美と紗霧ちゃんだけ?他の人はいないの?」
「あ、モーリス来てくれたんだ、ってそうよ、私達だけよ、何か変?」
「いや、変っていうか、ちょっと驚いてね。
飲茶って言っていたからこう、もっと華やかだと思っていたから。」
「本当はもっと華やかにしたかったんだけど、個人出展だったから、あんまり予算下りなくて。」

 隆美が少し残念そうに答えるとその様子をじっと伺っていたみあおが思いついたように声を上げる。

「それじゃ折角だし華やかにしようよ、みあおも協力するからさ。」
「華やかにするってどうやってですか?」

 不思議そうにみあおに聞き返す紗霧にみあおはどこか悪戯っぽい笑顔を浮かべて数着の服を鞄から取り出す。
それは色とりどりの中国式ドレス、いわゆるチャイナドレスであった。
そしてそれを見たモーリスはちょうど良かったと言わんばかりに二人に声をかける。

「ちょうど私も同じ事を考えていたんですよ。
演劇部から借りてこれないかな?とか考えていたんだけど借りてくる必要がなくなったね。折角だから私達も手伝おうか?ね?みあおちゃん?汐耶さん?」

 そう言って微笑を浮かべるモーリスの手にはしっかりとチャイナドレスが握られていた。

……
………
…………
……………

そしてしばらく後その場には、、四人のチャイナドレスを着ている女性の姿があった。
汐耶が濃い紫色、隆美が朱、紗霧が黒、みあおが白いドレスであった。
汐耶と隆美のドレスは幾分スリットが深めの少し色気のあるものを紗霧とみあおの物は可愛らしさを強調したものであった。
その姿をモーリスがどこか満足そうに眺めている塗布と後ろの方に気配がしたので皆が振り替えるとそこには神聖都学園の制服を着たおとなしげな女性が立っていた。

「あの…、ここは飲茶屋さん、ですよね?
よければ少し疲れたのでお茶をいただいて休ませていただきたいのですが。」

 そう言って声をかけたのは学園祭の中では比較的珍しい、学園の制服をそのまま着た少女、鹿沼デルフェス(かぬま・−)であった。
デルフェスは隆美に烏龍茶を頼むと店内を眺める。

「それにしても……お客さんあまり来ていらっしゃらないんですね。
こんなに美しい店員さん達がいるのに不思議ですね、もしわたくしでよければ何かお手伝いいたしましょうか?」

 烏龍茶を飲みながら隆美と本の話などをしながらふとデルフェスがそう提案する。
デルフェスの提案は宣伝に行く組と、店で店番をする組に分かれ、お店をもう少し華やかにするというものであった。
そしてしばらく相談した結果、紗霧とデルフェスが呼び込みを担当する事になった。
残った隆美、みあお、汐耶とモーリスが担当する事になる。

「あの……本当にこの格好で外に行かなきゃ行けないですか?」
「大丈夫です、紗霧様は良く似合っています。とてもかわいいですよ。」

 着慣れない、どちらかと言うと紗霧にとっては露出の多いチャイナドレスに、恥ずかしそうにもじつく紗霧を見てデルフェスがそう元気ずける。

「そうですか?だったら少し頑張ってみようかな……。
あ、そういえばデルフェスさんは、この服着ないんですか?」
「え?わたくし…ですか?でももうないようですし」
「もう一着あったよ?折角だからみんなで着ると楽しいと思うよ?」

 驚いたように紗霧の言葉を聞き返すデルフェスだったが、ちょうどそこで自分の荷物を調べていたみあおがすっと一着の青いチャイナドレスをデルフェスに手渡す。
みあおの勢いにおされてかデルフェスはその渡されたチャイナドレスをそのまま手に取る。

「あ、ありがとう……。」

 戸惑いながらもドレスを受け取ったデルフェスは少し困った様に紗霧達を見るが、隆美と汐耶はすっと視線を逸らす。

「大丈夫ですよ。
私にだって似合うんなら、デルフェスさんならきっともっとよく似合いますよ。」

 無邪気な笑顔でそう話す紗霧を見て、仕方ないと云う気持ちと意を決したという感じでチャイナドレスを握り締める。

「それじゃ早速二人で呼び込み行って来ましょうよ。
途中で着替えればいいと思いますし。」
「え、ええ……。」

 そう言って紗霧は多少勢いに押されているデルフェスの事を引っ張っていく。
屋上に残った四人は階段を下りていく紗霧とデルフェスを見送った後、彼女達がいつお客を引き連れて戻ってきても良い様にそれぞれ動き始めた。

……
………
…………
……………

「みあおちゃん、その烏龍茶のコップとって。」
「隆美これだね?、ちょっとまってて。」

 みあおと隆美は忙しいながらもどこか楽しそうに。

「きゃっ、な、何するんですか……。」

………
…………パァン!!

 綺麗にお盆が頭にクリーンヒットする音が聞こえる。

「お客さん?そういうのはやめていただきたいのですが?」

 冷静なしかしどこか迫力のある声で紗霧に痴漢行為を働いたお客に汐耶が天誅を加えたり。

「あ、そういう重いものは私が持ちますよ、デルフェスさん。」
「あ、ありがとうございます、モーリス様。」

 相変わらずのフェミニスト振りを発揮するモーリスなど、れまでの閑散とした空気が嘘の様に文月楼はにぎわっていた。
そしてその賑やかな空気のまま学園祭はすぎて行くのであった。

「このままこの楽しい時間が続くと良いね。」

 その紗霧の言葉がその場にいる皆のすべての気持ちを表していた。


Fin


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ モーリス・ラジアル
整理番号:2318 性別:男 年齢:527
職業:ガードナー・医師・調和者

■ 海原・みあお
整理番号:1415 性別:女 年齢:13
職業:小学生

■ 綾和泉・汐耶
整理番号:1449 性別:女 年齢:23
職業:都立図書館司書

■ 鹿沼・デルフェス
整理番号:2181 性別:女 年齢:463
職業:アンティークショップ・レンの店員

≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋


2004.10.03
Written by Ren Fujimori


●【個別ノベル】

【2318/モーリス・ラジアル】
【1415/海原・みあお】
【1449/綾和泉・汐耶】
【2181/鹿沼・デルフィス】