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![]() ![]() 「これにて、全競技を終了致します。お疲れ様でした」 響・カスミによるアナウンスが運動場に流れる。 運動会に参加していた皆のざわめきは、満足感を感じさせるものだった。 勝ったチームも、負けたチームも、全力を出し切ったのだから、それも当然というものだろう。 そして、僅かに混じる残念そうな声色。どんなお祭りも終わる時は来る。それでも名残惜しい。 「じゃ、閉会式をやるよ。整列しろとは言わないから、とりあえずこっちに注目」 競技場中央に碧摩・蓮は歩み出て、マイクを片手に言い放った。 「付き合ってくれてありがとう。楽しんでくれたかい?」 問いかけに、答は思い思いの声で返る。競技場に響き渡る声によると、どうやら、楽しんでくれたらしい。 「そうかい。楽しんでくれたようだね」 蓮は嬉しそうに薄く笑った後、更に言葉を続ける。 「じゃ、成績発表は先に済ませた通りだ。いよいよ、本命のゲストにご登場願おうかね」 言いながら蓮は、手にした古書を開いた。 そして、其処に書き記された呪文を口中で呟きながら読み進める。 と‥‥地面が鈍く光った。 その時、空から見たならば、白い光で競技場いっぱいに描かれた巨大な八卦図が見えた事だろう。 そして、天空が俄に掻き曇り、轟々と雷鳴が轟き、稲光が走る。 霊力が空気を振るわす程に高まり、そして、閃光と共に光の柱が大地に突き刺さった。 「来たね」 蓮がニヤと笑う。 光の中に大きな獣の影が見える。それは白虎の姿をしていた。 「あれが白虎‥‥」 その姿を確認し、草間・武彦は僅かに緊張した様子を見せる。 白虎は、他を圧倒する神聖な霊気を身に纏わせたまま、厳かに競技場を見渡し、そこに居る一人一人を確認するように見やった。獰猛な獣性を見せるその眼差しには、理知と神性も宿る。 数千年の時を経て、今再び地上に降臨した聖獣は、ゆっくりとその口を開いた。 「出ました! 金気小陰、吉方は西。守り星は金星。大事の前に、まずは良く語るが吉。義を欠かくな。虚言妄言は慎め。肺病、腹下しに回復の気あり。怒りは露わにしてこそ吉。好機は秋に来る、待てば吉。黍、桃、鶏を食して病知らず。辛ければなお良し。飼うならば獣。ラッキーカラーは白。ラッキーナンバーは4と9! 以上! 当たるも八卦当たらぬも八卦!」 何だかパチンコ屋の場内アナウンスのようなお気軽な口調で一息に言い、白虎は誰にも文句や突っ込みを言わせないままにドロンと空に消える。酷くあっけなく。 あれほど曇って、嵐の様な状況を演出していた空も一瞬で晴れ上がり、光る八卦図も電灯のスイッチを切ったみたいに消え、後には白虎降臨を思い出させるものは欠片も残ってはいなかった。 「ん、良い卦だった」 満足そうに言う蓮に、草間が呆れた様子で言う。 「いや、待て。近所の神社のオミクジの方が、まだ気の利いた事を書いてるぞ」 「まあ、そう言うんじゃないよ。楽しかったら、それで良いじゃないか」 蓮は満足らしい。あれで。 草間も抗議を続けようと言葉を選んでいたが、ややあって諦めた。 「終わってみれば、死人も出ず、みんな元気に終わったんだからそれで良いか」 「そうだね。あんたに足りないのは、諦めって奴さ。それが出来てりゃあ、もうちっと楽にいきられるんじゃないのかい?」 「マイクを通して説教される謂われはないぞ!」 マイク持ったまま言ってのける蓮に、草間は抗議の声を上げる。 それを完全に無視して、蓮は話をさっさと進めた。 「後は、各チームの応援担当にコメントもらって終わりとしよう。ま、みんなご苦労さん。楽しませてもらったよ」 言って蓮は、優勝チームの応援担当にマイクを放り渡した。 ![]()
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